株式投資情報動画配信 日本インタビュ新聞社 - You Tube

株式投資情報動画配信 日本インタビュ新聞社 - You Tube

[IRインタビュー]の記事一覧
  (ブログ内の記事検索は右サイドバーの検索窓から)

記事一覧 (04/04)【IRインタビュー】データ・アプリケーションの安原武志社長に「成長シナリオ」を聞く
記事一覧 (11/30)【IRインタビュー】テンポイノベーションの原康雄社長に「コロナとの闘いと中長期的な展開」を聞く
記事一覧 (01/20)【テンポイノベーション・原康雄社長に聞く】ストック型の収益が積み重なる独自のビジネスモデルで業績拡大続く
記事一覧 (10/10)【社長インタビュー】「保育士不足は更に深刻化している状況」JPホールディングス・古川浩一郎社長に聞く
記事一覧 (12/11)【社長インタビュー】Eストアーの石村賢一社長に現況と今後の展望を聞く
記事一覧 (02/05)【インタビュー】アイビーシーの加藤裕之社長に成長分野への進出など今後の取り組みを聞く
記事一覧 (09/06)【インタビュー】パシフィックネットの上田満弘社長に聞く
記事一覧 (06/24)【インタビュー】協立情報通信の5月に就任した長谷川浩新社長に聞く
記事一覧 (05/24)【インタビュー】ピクスタの古俣大介社長に聞く
記事一覧 (05/11)【インタビュー】メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に聞く
記事一覧 (02/20)【インタビュー】JPホールディングスの代表取締役・荻田和宏氏に聞く
記事一覧 (02/09)【インタビュー】ファーストコーポレーションの中村利秋社長に今後の成長戦略を聞く
記事一覧 (12/14)【インタビュー】アイビーシーの加藤裕之社長に強みや今後の成長戦略を聞く
記事一覧 (11/16)【近況リポート】日本エンタープライズの子会社で電子商取引サービス『いなせり』
記事一覧 (09/16)【翻訳センターの東社長にインタビュー】上場来初!1Q業績上振れで通期予想を上方修正
記事一覧 (08/31)ファンデリーの代表取締役阿部公祐氏に近況と今後の見通しを聞く
記事一覧 (07/20)イワキの岩城慶太郎社長に聞く
記事一覧 (07/15)ヨシムラ・フード・ホールディングスの吉村元久社長に聞く
記事一覧 (06/20)メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に事業の特徴と展望を聞く
記事一覧 (03/18)ヨコレイの西山敏彦社長に展望を聞く
2022年04月04日

【IRインタビュー】データ・アプリケーションの安原武志社長に「成長シナリオ」を聞く

【データ・アプリケーション 安原武志代表取締役社長執行役員に成長シナリオを聞く】

■EDIミドルウェア市場のマーケットリーダー
 さらにデータ・インテグレーション市場のトップを目指す


 データ・アプリケーション<3848>(東証スタンダード)はEDI(電子データ交換)ミドルウェア市場のマーケットリーダーである。戦略製品の拡販に加えて、ソフトウェアの売り切りからサブスクリプション型のリカーリング売上(注:継続的なサービス提供から得られる収益)へのシフトによって安定成長を図るとともに、データ・インテグレーション市場でのトップを目指して積極投資を続けている。安原武志代表取締役社長執行役員は就任2年。今後の成長シナリオなどを含め、投資対象としての魅力を存分に語っていただいた。

din11.jpg

■得意とするEDI領域のパッケージベンダーに転換

――設立が1982年でIT系の企業としては設立が比較的早く歴史を感じますが、設立から現在までの変遷などを教えてください。

 【安原】設立当初はシステム開発・運用のSIer(エスアイヤー、注:システムインテグレーション事業者)として事業を行っていましたが、その後、我々が得意とする通信パッケージや通信ミドルウェアなど、いわゆるEDIの領域で独自製品を開発・販売する戦略に変更しました。簡単に言えばSIerからパッケージベンダーへと転換して現在に至るということになります。

 さらに今後はパッケージ販売だけではなく、我々自身がサービスベンダーになるように新たな成長戦略を進めているところです。先の決算説明資料にも掲げましたが、データ・インテグレーション市場でのNO.1を目指しています。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:37 | IRインタビュー
2021年11月30日

【IRインタビュー】テンポイノベーションの原康雄社長に「コロナとの闘いと中長期的な展開」を聞く

■飲食店の店舗転貸借事業、コロナ禍を乗り越え、7年後に3倍の取扱い物件数を目指す

 テンポイノベーション<3484>(東1)は、飲食店向けの店舗物件に特化して賃借し転貸する、店舗転貸借事業を行う。新型コロナの影響で飲食業界は大打撃を受けた。同社にも事業や業績について心配する声が届いたというが、この第2四半期決算(2021年4〜9月)は売上高が前年同期比9.6%増加し、営業利益は52%増加するなど急回復。アナリストからは「ポストコロナ銘柄」として注目が高まっている。同社・原康雄社長に「コロナとの闘いと中長期的な展開」について話を聞いた。

tmm1.jpg

■ピンチはチャンス、コロナ禍でも出店意欲の旺盛さを実感

──新型コロナの影響が本格化した頃は、どんな心境でしたか。

 【原】 昨年4月に緊急事態宣言が出されたときは、不透明感が強く、この先どうなるかわからないというのが率直なイメージだった。この頃は転貸借物件の総数が1700件ほどで、これを家主から借りてそれを飲食店に転貸しているのだが、このうち半数以上に解約が出て、なおかつ新たに飲食店を開業する人がゼロとなるシナリオも頭をよぎった。また、コロナの影響が長期化する可能性についても考えていた。

 一方で、当初は、国や自治体が、飲食店向けに給付金や協力金を支給することは想定できなかった。最初に伝えられたコロナ関連の給付の話は、全国民に1〜2万円を支給するという報道だった。想定以上にコロナの影響が大きくなったことや、飲食業界からの強い要望もあったこととはいえ、政府による飲食店向けの手厚い給付金や協力金といった支援は予想外のことだった。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:09 | IRインタビュー
2020年01月20日

【テンポイノベーション・原康雄社長に聞く】ストック型の収益が積み重なる独自のビジネスモデルで業績拡大続く

t12.jpg

■ニーズの高い飲食店の居抜き店舗物件を不動産オーナーから賃借し、飲食店テナントに転貸

 テンポイノベーション<3484>(東1)は、飲食店の店舗物件に特化し、1都3県において、店舗転貸借事業を専門的に行うプロフェッショナルな会社だ。ランニング収益(ストック型の収益)が積み重なる独自のビジネスモデルで業績は最高益を連続更新中。「専門性・希少性の高いノウハウが培われており、株式市場においても中長期的にご評価いただけるのでは」と語る同社・原康雄社長に高収益の源泉などを聞いた。

■収益構造は、契約毎に発生するイニシャル収益と、毎月の家賃収入であるランニング収益


――まず、収益構成について教えてほしい。

 【原】 収益の中心になるのは、毎月の家賃収入だ。当社が家主から賃借する賃料に、相場観を考慮したうえで、テナントに貸し出す転貸賃料を設定し、その差益が転貸差益として毎月の収入、ランニング収益になる。

 このほか、契約時に賃料相当の手数料や、居抜き物件の造作売買手数料をいただくので、こちらはイニシャル収入、フローの収益になる。

 こうして「転貸借物件数」が相当数積み上がると、転貸差益としてランニングの収益が不労所得のように積み上がっていくので、非常に安定性、収益性に長けたビジネスモデルといえる。

 ちなみに、この第2四半期末(2019年9月末)の転貸借物件数は1584件(前年同期比249件の増加)に拡大した。直近はさらに拡大して1634件だ。仮に月々の転貸差益が平均7万円だとして、これが2000件になると、ランニングの収益だけで月に1億4千万、年間で17億円、そこに契約毎に発生する、手数料収益や造作売買手数料がプラスされることになる。

 当社の収益構成は、大体このようなイメージでとらえていただければ分かりやすいのではないか。

■好不況にかかわらず首都圏では開店したい人が高水準で推移

――事業特性としては「不況型」「好況型」どちらのタイプに。

 【原】 どちらかというと不況のほうがいいかもしれない。というのは、当社事業の片方の面として、閉店する店舗が増えれば、我々からすると仕入れの機会が増えるからだ。

 その反面、不況だと店を出す人が減るのではと思われるが、実際は、店を出したい人の数は減らないというデータがある。約10年前、当社はWeb上で店舗物件の検索ができる「居抜き店舗.com」というサイトをオープンした。このときに、オープン当時で月に500社、年間で6000社の出店希望の新規登録があった。あれから10年経ち、現在までどうなっているかというと、ほぼ同水準で店を出したい人の登録がある。

 わかりやすい例でいうと、東京・渋谷の竹下通りは、かれこれ30年以上現在と同じレベルの混雑が続いている。渋谷駅前にはもっと前から大きな繁華街がある。これと同様、東京都心の店舗物件は、商業地域の規模が大きく、密度も高い分、店を出したい人の数もほぼ変わらず高水準で推移しているとみていいだろう。

 こうしたことは、皆さん普段の生活の中ではあまり意識しないかもしれないが、東京の中心で店舗物件を専門に扱っている人間としては、安定した強い求心力と、高いポテンシャルを常々実感している。

――なるほど、それで「1都3県」というビジネスモデルですね。

 【原】 「1都3県」で飲食店舗物件が16万物件あるとされている。そして、東京都内には約8万5000軒の飲食店があるといわれている。一方、いま我々が借りているのは、「たったの」1634件に過ぎない。物件の仕入れだけを考えても大きなポテンシャルがあるのは明らかであり、当面は、1都3県に集中して事業を広げていきたいと考えている。

■「転貸借物件数」7年後に3倍めざす、それでも潜在市場の5%程度

――中期経営計画(2022年3月期まで)を推進中です。

 【原】 中期経営計画の中身自体は、いまの事業が好調なので、その底上げを強める計画としている。現状、新規の契約は年間200件から250件あるが、これを、3年がかりで600件まで底上げする。

 そして、こうした母数を上げるには、人の増員、人の戦力化、これに尽きる。いま、営業担当者はだいたい35名ぐらいの体制だが、これを4年がかりで100名体制にし、順次戦力化を図る。こうした取り組みを続け、7年後の「転貸借物件数」を5500件まで拡大したい。いま1634件のところを3倍以上の5500件までもっていく。

 この5500件という数字には根拠があって、いま「1都3県」に約16万物件、飲食店の店舗物件がある中で、我々の基準で仕入れの対象となる物件は11万件ぐらいある。そのうちの5%が5500件となる。この5%を当社で借り上げて提供する計画だ。

 この計画が実現すると、年間のランニング収益だけで40億円になる。この年間40億円のランニング収益を維持するのに必要な社員の数は190名から200名ぐらいだ。今は80数名だが、収益が年間40億円台の体制になれば、1人あたり営業利益が2000万円クラスとなり、かなり生産性の高い、高収益なビジネスモデルが構築できる。

t13.jpg

――中期成長を測る上で投資家が注目すべき勘所、数字や指標を。

 【原】 「転貸借物件数」が基本的な指標となるが、それ以外では、社員の増加数がわかりやすいかもしれない。これまで述べてきたように、いま1634件ある「転貸借物件数」を7年後には3倍以上の5500件までもっていくことなどを進め、ランニング収益だけで年間40億円規模にするには、人員も200名近い規模が必要だ。

 中途採用は1ヵ月に1人ぐらい、新卒は毎年10人前後の採用という計画だ。仕事を覚えるにはそれなりの時間がかかるので、着実に人をふやしていきたい。年間20名から25名ぐらいの増加ペースだろう。当社の仕事は、お店を出したくて店舗物件を探している方に、この物件はどうですか、と紹介する仕事なので、いわゆるセールスマンの仕事とはちょっと異なる。

■「株主優待は実質拡充、利益拡大で増配前向き検討」

――業績は絶好調、株主還元についてのお考えは。

 【原】 昨年5月に株主優待の導入を発表し、12月には株式分割を実施したが、100株保有で3000円のジェフグルメカードという優待条件は据え置き、実質的な優待の拡充をした。一方、配当は、配当性向25%から30%を目安に考えている。ストックビジネスの特徴として、利益が毎年、確実に右肩上がりに積み上がって行くことになるが、それに比例して利益が順当に増えていくので、当然増配に繋がり、株主様にとっても魅力があると思う。

■事業エリアは東京を中心に1都3県、対象物件はビルイン・路面店

 さきほど、「1都3県」に飲食店の店舗物件が16万物件あると話したが、このうち、年間で8〜10%は閉店して新たに入れ替わっている。これは、10年も経つとほぼすべて新しくなっていることになる数字だ。東京では世界中の料理を食べることができ、たとえば、新宿では手に入らないものはないくらいだが、こうした世界的にも突出したエリアで我々は事業を行っている。

 当社は、地方に多くあるロードサイド店などは扱わず、あくまで都心部の駅近の物件で、ビルインと言われる店舗や路面店を中心に、10坪〜30坪ほどの小規模物件を中心に、飲食店としての訴求ができ、飲食テナントを募りやすい規模の物件を扱う。幸い、東京にはこうした店舗が非常に多い。

 前期・2019年3月期の営業利益は7億円台に乗り、8年前と比較すると2000倍に拡大した。今期は8億円を超える見込みになっている。「転貸借物件数」を足元の3倍以上の5500件までもっていく計画だと話したが、これは、イメージすれば、ビルオーナーさんがビルを1つ増やしました、翌年また買いました、と毎年増やしていく場合に似ている。家賃収入、転貸差益は比例して増えていく。ちなみにテナント誘致が困難で空家賃が発生する物件は、解約すればいい。我々は所有しないので、所有者責任などのリスクがない。これもメリットになる。

 当社は十数年間、この店舗転貸借事業だけに特化している。東京の店舗物件、都心の店舗物件を借りて貸す、しかも飲食店テナントにターゲットを絞っており、専門性が非常に高いノウハウが培われている会社だと思っている。いわゆる「選択と集中」が一番いい形で発揮できていると思う。そこに会社としての価値を感じており、株式市場においても中長期的にご評価していただけるものと考えている。

――ありがとうございました。(聞き手:本紙・智田拓)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:00 | IRインタビュー
2019年10月10日

【社長インタビュー】「保育士不足は更に深刻化している状況」JPホールディングス・古川浩一郎社長に聞く

jp11.jpg

■「幼児教育・保育無償化」が始まり来春は入園希望者が再び増加

 2019年10月1日、「幼児教育・保育無償化」が始まった。無償化により、来春は保育園などへの入園希望者のさらなる増加が予想されている。しかし、その一方で、「保育士さんは現在も7万人は足りない現状があり、地域によっては「『保育士不足により保育園に入園できない危機』すら懸念される状況」(JPホールディングス<2749>(東証1部)の古川浩一郎社長)との指摘がある。「保育士さんにも、かつて教員確保のために政府が実施した『人材確保法』のような措置を講じて処遇を改善しないと根本的な解決にならない」と提言する同社・古川社長に現状と展望を聞いた。

■保育士7万人が不足し「状況は待ったなし」、『人材確保法』のような制度を

――「幼児教育・保育無償化」が始まり、子育て世帯は大歓迎ですね。

【古川】 3歳児から5歳児までの幼稚園、保育園、認定こども園などを利用する子供たちの保育料が無償化された。このため、確かに、子育て世帯にとっては朗報であり、来年、2020年春には入園希望者が大きく増加すると予想されている。

 ただ、問題は受け入れ体制にある。施設数は全国的に増加傾向を続けているが、保育士さんの数は増えていないため、その分だけ保育士不足が深刻化している。現在でも全国で7万人は不足していると言われている。このため、来春は、地域にもよるが、入園希望者の増え方によっては、再び「保育園落ちた」などで社会問題化する可能性もあるとみている。

■幼児教育の質の低下につながることは絶対に行なえない

 受け入れ体制を拡大したいのは言うまでもないが、保育士さんが決定的に不足している。今回施行された「幼児教育・保育無償化」については、受け入れる側として当初問題視していた「保育士さんを確保するための支援策」が、並行して設けられていない状況にある。現状、これが打ち出されない限り、入園希望者が急増した場合でも、受け入れ体制の急な拡大には厳しいものがある。実態に即して言えば、急激な入園希望の増加に対応できる状態ではないというのが現場の実情である。

 一例ですが、2013年に韓国で幼児教育・保育無償化する政策が実施され、保育士の確保や処遇面などから、結果として幼児教育の質の低下が問題視されたことがあった。こうした意味でも、質の低下につながるような企業行動は、株式会社としても絶対に行なえない。

 このため、いま、保育園を急に増設するといった拡大策には慎重にならざるを得ない。保育の質を維持・向上させながら受け入れを拡大することが当社の社会的な使命であると考える。

■保育士の人材確保のため給与大幅アップの時限立法措置なども

――保育士さんを確保するための支援策を教えて下さい。

【古川】 保育士さんが決定的に足りない要因のひとつとして、保育士さんという職業に関する法整備がなされていないことが挙げられる。これが勤務体制の不規則さや待遇の格差などにつながり、全国的に7万人の保育士不足が現実に起きてしまった。大都市圏では保育士さんの奪い合いのような状態が続いており、保育現場の混乱、ひいては質の低下の要因にも繋がっている。

 こうした窮状ついては、かねてから、担当省庁や内閣府などに実情をお伝えしており、総理の耳に届くようなところにもお話している。このため、たとえば、保育士という職業に就いて法的な整備をしていただき、学校の教職員のように、同一の資格者には、どこで働いても同等の待遇が与えられるといった基本的なことを法的に担保していただければ、職業としての魅力向上にもつながり、状況は大きく変わると思っている。

■教職員の不足に対応した昭和の「人材確保法」に範を取ることも

 昭和49年のことだが、学校教職員の不足が深刻化していた昭和のある時期、教育の質の低下が懸念される状況を打開する目的で、「人材確保法」が制定された。教員の給与を一般の公務員より優遇することを定め、給与を大幅に増額するなどの措置を講じ、人材を確保した。

 そこで、保育士さんについても、これに似たことを、いま要望している。現在の保育士さんの年収は全国平均で約360万円となっており、当社は約400万円であるが、たとえば「保育人材確保法」として、これを平均510万円まで上げていただきたいといった提案をしている。とにかく保育園で働く保育士を早急に増やさなければならないということだ。

 こうした措置を採っていただける場合、さらには国主導で一斉にやっていただきたいと思う。国が制度設計しても自治体の足並みがそろわないケースも想定されるが、2020年4月には、また入園できなかった希望者が増加する可能性がある。いま現在、このタイミングで一斉に行わないと間に合わなくなる状況もあると思っている。待ったなし、といえる状況で、年度内に議論していただき、早期に手を打つ速さが求められる段階だと受け止めている。

――ありがとうございました
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:40 | IRインタビュー
2018年12月11日

【社長インタビュー】Eストアーの石村賢一社長に現況と今後の展望を聞く

◆時代の要請に合わせ、ネットショップへの「EC総合支援サービス」を積極拡大

 Eストアー<4304>(JQS)は、EC総合支援ソリューションを展開している。同社は、アマゾンや楽天市場といったECモール店ではなく、企業のEC本店(専門店)向けを中心に販売システムを提供。現在は、ネットショップに「売れるノウハウ」マーケティングの提供を強化し、総合的に支援する「EC総合支援サービス」を拡充している。また、この8月には電子認証事業にも進出した。「ネットショップの信用力も高める」と話す代表取締役・石村賢一社長に、当面の展望などを聞いてみた。

h12.jpg

◆マーケティングサービス事業の売上高は10億円に届き、収益の柱に育つ

――今期の業績予想は増収減益の計画としていますが、主な要因を教えて下さい。
 
 【石村】 ひとことで言えば今は転換期ということであり、「踊り場」にあるためだ。当社は、独自ドメインネットショップの「カート」(買い物かご)を15年程前に国内で初めて導入した。そのEC販売システム「ショップサーブ」を中心に拡大してきたが、時代の要請に合わせ、数年前から、EC事業者を対象に総合的な支援を行う会社を目指して事業構造を切り替えている。そのための投資を積極的に行っている。

 というのは、ITやAIが急速な進歩を遂げ、IoTの時代が本格的に到来してきた現在、単なるソフトやITシステムは真似ること、コピーすることが容易になってきたことがある。EC販売システムの分野も次第に差別化がなくなりはじめている。ここ数年はEC販売システムを生業とする業者が増え、競争が激化してきた。

 こうした動きは、ある意味、当然のことで、小売りEC事業者も増えており、今後はECで「買われるためのノウハウ」「売れるノウハウ」へのニーズが高まってくるだろう。こうしたことを予想していたので、今後必要になってくる武器…つまり「調査・分析」や「企画・クリエイティブ」、そして「課題発掘」などのマーケティング力を強化し、これらを含むEC総合支援会社へとシフトするために切り替えを図っているところだ。

 具体的には、ECコンサルティングやホームページ制作代行、人を集めるための広告宣伝代行といった業務になる。こうした業務は機械ではなくヒトが得意とするサービスであり、当社が今まで培ってきた専門店ECの取引経験やデータの蓄積が活きてくる。冒頭で挙げたような真似、コピーに浸食されにくい分野になる。

 すでに、マーケティングサービス事業の売上高は10億円に届き、収益の柱に育ってきた。今期の連結売上高の見通しは56億円。引き続き強化している時期だ。また、マーケティング領域の中でも、機械が得意とするものについては、先行してシステム化を進めている最中だ。

最初に「踊り場」といったが、抜け出るために投資は継続する。もちろん利益内で行う。

◆EC市場はアマゾン型の消費財を中心とした拡大から専門店型優位の拡大へ移行

――EC市場が成長を続ける中で、モール店、自社本店の現状と展望をお願いします。

 【石村】 EC市場は2017年度で市場規模が16.5兆円に達し、まさに右肩上がりで成長を続けている。2023年には26兆円との試算があり、今後も成長は続くだろう。ただ、現在までの成長は、「モール」と言われる、アマゾンなどが得意とする消費財を中心とした商材による成長であり、この先は次第に伸びが鈍化するとみている。

 なぜかというと、高齢化が進むにつれてモノ、消費財の購入は縮小していくだろう。あのアマゾンもリアル店舗でのビジネスに舵を切り出して注目されたが、それが見えていることの裏付けだと思う。ただし、コト軸消費は伸びてくると予想する。

 高齢化とはいっても、現代は、生活年齢の若い方、元気な方が増え、可処分所得にも余裕のある世代だ。若い時にはできなかったコトや手が出せなくて買えなかったモノなど、趣味・嗜好品、お友達との時間、特に女性向けの美容、理容品などコト軸消費が買われ出す傾向になる。こうしたこだわりのモノは、アマゾンのようなモールよりも専門店が優位だ。なので、専門店のECは今の数倍は伸びてくると予測している。当社の顧客、当社にとっても、これから伸びる「伸びしろ」のある市場だと見ている。

◆電子認証事業にも進出しネットショッピングサイトの信用力を高める

――子会社を設立した経緯を教えてください。

 【石村】 今年、2018年8月に電子認証事業(注・サイト証明書や企業証明書の登録・発行事業)、を買収し、子会社化した。この背景は、ブラウザベンダーによる「危険サイト表示」を防止し、ネットショッピングサイトの信用力を高めること、ひいては売り上げの低下といった弊害から保護することだ。

 「危険サイト表示」は、ホームページのアドレスの横に鍵(カギ)のマークとともに出てくる「保護されていない通信」あるいは「保護された通信」という表示のことで、今年9月からベンダー各社が表示している。これは、フィッシングサイト詐欺などから消費者(アクセス者)を守るために、グーグル(クローム)を筆頭に、アップル(サファリ)など、SSL証明書がインストールされていないサイトを対象に「危険表示」を出すというものだ。

 この対策として、当社の「ショップサーブ」を利用する店舗については、すべてに対して無料でSSL証明書を提供し、完全実装させた。9月末日段階で100%を達成した(いろいろな理由で辞退される顧客を除く)。ここまでは当社にとってコストになるが、申し上げた通り、「ショップサーブ」利用店舗の信用力向上や売り上げ低下防止などにつながっている。

 現在は、サイトの実在を証明する「DV証明書」、企業の実在を証明する「OV証明書」、それがより強化された「EV証明書」などがあるが、今後は、外販を強化するほか、より消費者保護のセキュリティが高まるので、取引証明書や信用証明書、これらを利用したエスクローサービス(注・預り金の商品受け取り後の支払い)などの次世代証明書によって収益化を進める計画だ。

h11.jpg

――11月初旬に第1回の転換社債型新株予約権付社債を発行しました。

 【石村】 少々ひねった答えになるかもしれないが、主目的は「外部からの経営視点の導入」だ。外部目線を経営に取り入れることにより、社内からでは見えない盲点をあぶりだせる経営体制にし、当社を次のステージに上げるスピードを加速させるためだ。また単に外部から人材を登用するよりも、資本を共有する人材のほうが真剣に取り組んでくれるという期待もある。そして、転換社債という形式をとった性質上、同時に10億円近い資金も得られるため、当社のボトルネックとして、人材リソースにかかわる育成、採用や労働環境の整備、電子認証事業の拡大などに活用する計画だ。

――最後に、貴社の株価水準(12月3日は900円前後)についてご感想を。

 【石村】 経営者なら誰でも自社の株価の先行きに自信を持っていると思う。当社はいま、EC総合支援会社へとシフトするための「踊り場」にあるため、多少先を展望すると、踊り場を経て再び拡大基調に移行するとともに今年8月や2年ほど前の高値水準を回復し、その後は、これらの高値水準の2倍、3倍に評価してもらえる時期が来ると思う。

――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:16 | IRインタビュー
2018年02月05日

【インタビュー】アイビーシーの加藤裕之社長に成長分野への進出など今後の取り組みを聞く

■中期戦略への取り組みや課題を加藤裕之社長に聞く

 アイビーシー<3920>(東1)は、ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーである。成長戦略に「新製品発売」「成長分野進出」「サービス領域拡大」を掲げ、性能監視のリーディングカンパニーからハイブリッド・クラウド、ブロックチェーン、IoTセキュリティ分野などITサービスへの事業展開を目指している。成長分野への進出など、中期的な取り組みや成長における課題を加藤裕之社長に聞いた。

ibcs1.jpg

■18年9月期は2桁増収増益予想

Q:先ず業績について、前期の実績と今期の見通しについてお聞かせください。

【加藤裕之社長】 前期(17年9月期)に関しては、上期は上方修正であったが、新製品「System Answer G3」(以下、G3)の発表により、下期は主力製品である「System Answer G2」(以下、G2)の買い控えの影響を受けた。サービス提供の売上が好調に推移し、売上高は10期連続増収で過去最高だったが、期初計画は若干下回った。利益は先行投資の影響もあり減益となった。

 ただし「Interop TOKYO 2017」(注:ネットワークコンピューティングに特化したテクノロジーのリーディングイベント)などでは、新製品「G3」がクラウドとオンプレミスのハイブリッド環境においても有効に機能することから、多くのエンドユーザーやパートナーから好評を得た。

 顧客の多くが大企業で、既存製品「G2」から新製品「G3」への移行は検証を重ねてから導入ということになるため、今期(18年9月期)の下期から「G3」ライセンス売上が本格化する見込みだ。17年8月開始した次世代MSP新サービス「SAMS」に対する引合いも増えており、今期は2桁増収増益を達成できると考えている。

■ブロックチェーン技術を活用した「kusabi」は画期的サービス

Q:成長分野への進出で大きな動きがあるようですが?

【加藤裕之社長】 17年12月にIoTデバイス向けセキュリティサービス「kusabi(楔)」の実証実験開始を発表した。

 IoTデバイス向けのセキュリティ対策では近年、専用チップ+認証局(CA)モデルが注目されているが、製造コストや運用コストの増加、ベンダーロックインによる汎用性の低下が課題として指摘されている。

 これに対して「kusabi」は、ソフトウェアだけでIoTセキュリティを実現できる。特許出願中のブロックチェーン技術を使った電子証明システムと、独自のデバイスプロビジョニング技術により、3つの不要(専用チップが不要、認証局が不要、マルウェア対策が不要)を実現し、ハードウェア依存モデルからの脱却を目指すセキュリティサービスだ。

 私もIT業界は長いが「kusabi」は画期的なサービスだと考えている。市場では「何がスゴイのか」という部分が必ずしも理解されていない印象を持っているが、今後の展開によっては大化けする可能性も十分にある。収益貢献には少し時間がかかるとみており、今期の予算には含めていないが、もし今期に売上計上された場合には、当然上振れ要因となる。株式の流動性を高め、また技術やサービスに対する理解をより深めてもらえるように、IRについても積極的に実施していきたい。

■中期的には「G3」「SAMS」「kusabi」が3本柱

Q:中期的な収益の柱は?

【加藤裕之社長】 新製品「G3」と新サービス「SAMS」がある。これに「kusabi」を加えて3本柱になると考えている。

 またブロックチェーン・IoT分野でソフトウェア・サービスを展開する子会社iBeedにも注目していただきたい。ブロックチェーン技術専門会社のコンセンサス・ベイスや、保険業界に強いバクテラ・コンサルティング・ジャパンと提携し、現在はインシュアランス(保険)分野にフォーカスして開発を進めている。インシュア・テックは日本では手掛けている会社がほとんどなく、保険会社からの問い合わせも増えている。今は連結対象にしていないが、そう遠くないうちに何か面白いことが話せるように、今は色々と準備を進めているところだ。

 ブロックチェーン関連では、最近仮想通貨の相場高騰が話題となっているが、あれは投機目的で動いているのであって、テクノロジーでもフィンテックでもないように思っている。個人的には地に足をつけて、ブロックチェーン技術を活用したビジネスを展開していくことを考えている。

■人材確保が課題

Q:今後の課題としている人材確保の状況はいかがでしょうか?

【加藤裕之社長】 新製品「G3」や新サービス「SAMS」の売上を伸ばすためにも、中期成長戦略を着実に実施していくためにも、人材確保・育成が重要であり、課題であることに変わりはない。

 複数のIT分野に精通し、全体俯瞰ができる人材の確保を進めているが、まだ不十分な部分もある。他方、知見を持った人材も集まってきているので、今後はアプリケーションやサービスを考えられる人材も徐々に増やしていきたい。

 当社の事業内容やビジネスモデルは、頭数さえ揃えば成長できるというものではない。売り手市場の中、優秀な人材の確保は簡単ではないが、人材の採用・育成を着実に進め、中期成長に対する投資家の期待に応えていきたい。

――本日はありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:09 | IRインタビュー
2017年09月06日

【インタビュー】パシフィックネットの上田満弘社長に聞く

■「フロー型」から「ストック型」へ収益構造を大きく転換

法人向けに、IT機器の調達・導入、運用・保守、引取・回収・データ消去、リユース・リサイクルをワンストップで提供する「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」を積極展開

11.jpg

 パシフィックネット<3021>(東2)といえば「IT機器の引取・回収・データ消去・リユース」大手とのイメージが強いが、近年は大きく事業転換を図り、IT機器の「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」を積極的に推進している。法人のPCやタブレット、モバイル等IT機器にかかわるサービスを、調達・導入、キッティング(事前設定)、ネットワーク構築や運用・保守までを行い、入れ替え時期が来た際には使用済み機器の引取・回収・データ消去・消去証明書発行、そしてリユース・リサイクルと、その全てをワンストップ行っている。この一連の業務を一貫して提供する事業者はほとんどなく、企業・団体からの反響は予想を超え増えているという。収益的にも引取・回収・データ消去やリユース中心の「フロー型」から長期レンタル型の調達、キッティング、運用・保守を中心とした「ストック型」への大転換が進んでいる。「また、グループ企業で進めている法人向け総合通信事業も手応え十分」と語る同社・上田満弘社長(=顔写真=)に当面の展望を聞いた。

■調達・導入から回収・データ消去、リユースまでをトータルで提供できる企業は比類なく、顧客の評価も高い

【上田】 当社の現在の事業構成は、大きく分けて、いわゆる使用済みIT機器の引取・回収〜データ消去、リユース販売といったフロー収益事業と、新品IT機器のレンタルから始まる調達・導入〜運用・保守という、ストック型事業の2つのセグメントになる。これを、前期からストック収益型の事業の方に大きく比重を移していこうと取り組んでいる。

 企業のIT機器の運用管理を担当している情報システム部門、いわゆる情シスの平均的人数は全社員数の1%以下と言われており、中堅・中小企業の場合は1名〜数名で全ての関連業務にあたっている。その方たちの作業負荷をアウトソーシングで低減し、本来業務に専念していただくためのサービスこそが今、非常に望まれる時代になってきた。

 レンタル型の調達といっても、単純に機器を貸し出すだけではなく、お使いになる方のデスクにPCが設置されたら即座に使える状態にして納入している。キッティングと言いますが、個社毎に指定のOSや必要なソフトウェアをインストール、基幹システムやネットワーク環境等に合わせた個別設定などの作業も代行し、電源さえ入れれば、すぐに使える状態でお納めする。これは付加価値が高いサービスだと評価して下さるお客様が多い。さらに導入後は、故障時のセンドバック対応や、ヘルプデスク代行、セキュリティ対策などの運用・保守サービスにも対応しているので、これらも合わせてご提案している。そして、入れ替えで不要になった機器は当社で引き取り回収する。個人情報や企業機密のデータ漏洩は絶対にあってはならないので、当社で完全に消去し、最後はリユース・リサイクルまで一気通貫でお受けしている。このように、情シスの皆様の業務効率化に大きく役立っていて、その結果、企業のIT戦略推進の支援につながっていると自負している。

 これらをまるっと全てトータルで自社完結し提供できる事業者は他にはほとんどない。導入から運用・保守だけを行う会社は多いが、引取・回収・データ消去、さらにはリユース・リサイクルとなると、ほとんど見当たらない。回収だけ、リサイクルだけ、などと何段階かに分かれており、社数が多く細分化されている。このようにワンストップで提供できるのは、現段階では特に上場企業では当社だけだろう。これらの業務を一社完結で行うので、途中で別の業者に機器を移動することもないため、情報漏洩対策上も非常に安心で、かつ競合優位性も高い。

 このように当社は、できるだけお客様の立場に寄り添った形でこうしたIT機器の「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」(=図表=)を戦略的に展開していく。

12.jpg

■これまでは環境変化による影響が大きく「ストック型」に戦略転換

【上田】 これまでの事業特性はというと、環境の変化による影響が大きかった。「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」(=図表=)の流れの中でいうと、(3)の引取・回収、データ消去、(4)のリユース・リサイクルがこれまで当社のビジネスの中心となっていた。ただ、この部分はWindowsのサポート終了による入れ替えやその反動減、景気低迷による機器の購入鈍化とそれによる排出(引取・回収の対象)減など、市場環境に非常に左右されやすい面がある。

 たとえば「Windows XP」のサポート終了が2014年にあり、このとき大量にPCの入れ替えが発生し回収量も大きく増えたのだが、この反動によって翌年以降、回収量がガクッと減り、それが業績に大きく影を落とすことになった。環境の変化が大きく、それによって売り上げも大きく左右される状態だった。

 このため当社では、環境がどんなに変化しようが、安定して成長いていくためには何をすべきかということを突き詰めて考えた結果、フロー型事業に偏ることのない、この「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」、つまりIT機器の調達・導入、運用・保守から引取・回収・データ消去、そしてリユース・リサイクルまでをワンストップで提供する事業展開にシフトした。

 環境の変化という点では、今年2017年に入って新品のPCの出荷台数は増えてきており、事業環境は回復に向かう方向性は見えてきている。入れ替え台数の増加は半年ほどタイムラグがあるので、回収という形で実際に当社売り上げに寄与してくるのは今年の秋以降ではないかと見ている。

 さらに、2020年1月の「Windows7」サポート終了を控え、企業のPC入れ替えがすでに始まり、それまでに多くの企業が「Windows10」へ移行する予定だ。このため、2018年以降出荷台数はさらに伸び、当社の回収台数も増えると予測できるが、その後に再び反動減が来るのは間違いない。このため、今から「Windows10」移行後の反動減を予測しつつ、「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」のうち、(1)調達・導入、(2)運用・保守を中心としたストック型事業に大きく舵を切り、環境の変化に負けない体質作りをしなければならない。

■現在25%前後の「ストック型」を早期に50%以上に

【上田】 今後の事業戦略として大きいのは「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」の展開で、その中でもレンタル型導入を中心としたストック型事業の売り上げ構成比を現在の25%前後から早期に50%以上に持っていきたいと考えている。一方、引取・回収、データ消去、リユース・リサイクル事業はそれほど増やすつもりはない。その分のリソースをストック型事業に再配置していく。人を増やすとコスト増になりますから、人員の再配置という形でストック型事業を拡大していきたい。数年後の売り上げ構成比は大きく変わることになる。

 ただ、大型の事業転換にはやはり先行投資が必要となる。特にレンタルという業態は先行投資が大きくなりがちだ。それで、ここ2年ほどは経費先行の決算になっている。前期(2017年5月期)は、中古PCの在庫を大きく圧縮した。BS(貸借対照表)を見てもらうとわかるが、7億数千万円あった棚卸資産が4億5千万円に、つまり3億円近く落とした。これをさらに落として軽くしていきたいと思っている。

■グループ企業による法人向け総合通信事業も軌道に乗る

【上田】 環境の変化に負けない体質作りの2つ目は、当社グループ企業、株式会社2B(トゥービー)の法人向け総合通信事業の拡大だ。当社のLCMサービスとのコラボレーションにより、お客様の評価が高まっている。

 とりわけ現在、企業からの反応がすこぶる良いのは、「クラウドSIM型海外Wi−Fiルーター」レンタルだ。今まで海外出張の際には、ノートPCはもちろん、通信を行うために、海外Wi−Fiルーター(滞在国がまたがる場合、複数台のルーターを持つ場合もある)、携帯電話、モバイルバッテリーと沢山のデバイスを持ち歩かなければならなかったが、これをノートPC以外、1つで済むようにした最新のALL IN ONEタイプの「クラウドSIM型海外Wi−Fiルーター」だ。これは独自の「クラウドSIM」技術によって、これまでのようなSIMカードの抜き差しが不要で、1台でアジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど、世界100ヵ国以上で使用できる。入国するとすぐに、その国の最も通信状態の良い通信キャリアを自動的に選択して接続する。国を移動しても、そのまま設定も変更なく使い続けることができる。モバイルバッテリーとしての機能もあり、さらにはIP電話機能で滞在国内でも日本への通話でも使用することができる。7月からは、海外出張前の多忙さを考えて、これを成田・羽田・関西の各空港で受け取れるサービスも開始した。

 値段も安く設定している。通信料は端末のレンタル料に含まれているので非常に便利でもある。レンタルなので、たとえば通信キャリアのように2年間解約できないといった「縛り」がなく、1年間だけとか、極端な例では短期出張用に1週間だけといった使い方も可能だ。あまり他社にはないサービスである。年度予算で動いていらっしゃるところが多いのでニーズに合致したこの「クラウドSIM型海外Wi−Fiルーター」レンタルサービスは、導入企業が増えている。

 また、同じく「2B」と当社とのコラボレーションで法人向けに展開しているのは、「テレワーク」「モバイルワーク」に最適な「SIM対応ノートPC」と「通信」のセットでのレンタルサービスだ。これから「働き方改革」に対応し「在宅勤務」や「サテライトオフィス勤務」や「モバイルワーク」を導入しようとする企業は、就業規則や評価制度、勤怠管理など導入にあたり様々なルールや決まり事の変更・調整をする必要があるが、ノートPCを購入したり、通信の契約期間に縛りがあるとスモールスタートをしながらの検証が非常にしにくい。この点、当グループの「SIM対応ノートPC」と「通信」のセットであればレンタルなので、検証期間を設定し小さくスタートすることが可能となる。

 更に本格導入のタイミングでは、より一層セキュリティを強化した通信プランなども提供している。「働き方改革」の動きが拡大するにつれて、当グループの手応えも増々強まっている。

 なお、「2B」の提供する「SIM」は17年8月末までに約2,000回線と順調に拡大している。

■成長市場への取り組みとして6月にM&Aのアドバイザリ子会社を設立

【上田】 成長市場への取り組みとして、今年の6月1日付で、M&Aのアドバイザリ子会社「株式会社エムエーピー(MAP)」を設立した。中小企業の経営者の年齢分布を見ると、年々高齢化が進み、引退年齢も同じように上がっており、また少子化もあり、事業承継の問題が社会問題となっている。当社の1万社を超えるお客様の中にも、後継者問題は予想以上に深刻な面がある。こうした中で、MAPがM&Aを含めたアドバイスをさせていただくことよって事業承継のお手伝いができるのではないか、ということだ。事業承継問題へのアプローチは国策にも沿う。

 M&A関連事業は、すでに大手企業が何社かあるにもかかわらず、まだまだ市場が拡大している。当グル―プは、異業種からの参入にはなるが、これまでの1万社を超えるお客様との実績やネットワーク、上場企業経営者などからのご相談などを総合すると、われわれが参入できる余地はいくらでもある。手応えもあり、想定以上に早い段階で軌道に乗る可能性が高い。

 実は、当社は「ラジオNIKKEI」で毎週火曜日と金曜日に「相場の福の神」という上場企業経営者をゲストに呼ぶ番組のスポンサーをしており、この番組を通じて、すでに130社近い上場企業経営者とのネットワークがある。こうした経営者に対してダイレクトに提案ができることも、話が早いというか、M&A関連事業を行う上での強みではないかと考えている。

 この事業が拡大すると、当社自身が必要とする事業を展開する企業を見つけやすくなる点でも大いに役立つ。当社の成長戦略にも寄与する。成長性の高い分野、参入障壁の高い分野で安定的に利益を出せる事業などで、当社もM&Aを戦略的に取り組んでいく方針だ。

 ───ありがとうございました。(聞き手・智田拓)

提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:07 | IRインタビュー
2017年06月24日

【インタビュー】協立情報通信の5月に就任した長谷川浩新社長に聞く

■「法人」と「コンシューマー」のバランスも重視し高収益体質の構築をめざす

 協立情報通信<3670>(JQS)は、企業経営に必要なICTソリューションをワンストップで提供する「ソリューション事業」と、ドコモショップの運営などからなる「モバイル事業」を事業の柱としている。東京都・中央区に設置する「情報創造コミュニティー」を営業活動の中核として、業務改善や情報活用のための各種セミナー・フェアを開催するほか、顧客やパートナー企業との新たなソリューションの共創の場、様々なソリューションを体験できる場として展開している。

 長谷川浩社長は今年5月に就任。2020年に予定されている「5G(第5世代移動通信システム)」が実用化すれば、企業の情報化や価値の向上に貢献できるICTソリューションの可能性がますます広がる」と豊富や意気込みを語った(敬称略)。

kyou1.jpg

――5月にご就任ということで、最初に「座右の銘」とか、駆け出しの頃の失敗談とか、おありでしたらお聞かせ下さい。

 【長谷川】 「座右の銘」かどうかはさて置き、「赤誠(せきせい)」という言葉をいつも念頭に置いている。「うそ偽りのない心で、真心をもって接する」という意味で、物事を判断するときの基準とか、様々な局面における決断の場面では、この精神を念頭に置いて対応している。

 前職は金融機関だった。当社に入ってからは8年目になる。全く違う業界に来たことになり、文化が違うなと感じたのが数字の単位だった。あるとき、社内資料に「500M」と書いてあり、一般に金融機関では「500ミリオン」と読むため5億・・・5億円。ひとつの案件でこの金額とは、これはものすごいと思ったのだが、実際には500「万円」のMだった。もちろん、数値化やデータ管理の方法は企業によって異なって然るべきだと思うが、固定観念で数字・データを読むと間違えてしまうと痛感した。

■「働き方改革」による「モバイルワーク」に注目

――4ヵ年の新・中期経営計画を推進中ですね。

 【長谷川】 当社のビジネスは「ソリューション事業」と「モバイル事業」に分けられる。もともとは電話交換機の販売・施工から始まったので、情報インフラには強い。やがてNECの特約店となり、昭和60年の通信自由化により情報通信サービスに参入。事業拡大を図る過程で、OBCの基幹業務ソフトなどの「コンテンツ」を取り扱うようになり、次にその「活用」という部分でマイクロソフトとの関係を作るというように戦略的な変遷を遂げてきた。こうした中で、「モバイル」というものに将来性を感じ、ポケベルの時代から進出を図り、以降、NTTドコモとの関係も築いてきた。

 現在、モバイル事業は全体の連結売上高の68%を占めるが、ソリューション事業と比べて利益率が低く、なかなか利益面に貢献しない。この点を中期的に変えて行かなければならないと考えている。

 まず、全体の連結売上高における法人向けとコンシューマー向けの構成比を、現在の「4:6」から「5:5」にもって行きたい。ドコモショップでの店頭販売と法人営業は戦略や営業活動、収益構造が異なるため、単に事業セグメントで考えるのではなく、「法人」と「コンシューマー」に分けた。当然ながら、法人向けの方が利益率は高く、その割合が増えれば利益率はおのずと上がるし、しかもソリューション事業とのシナジーによりいろんな可能性が生まれる。

 その法人向け事業としては、「働き方改革」が進められるなか、移動中に携帯電話やメールを使って商談を進めたり、取引先から社内のデータにアクセスしたり、テレビ電話で会議に参加したりするなど、いつでもどこでも仕事ができる「モバイルワークソリューション」が、ますます注目されていくと見ている。モバイル事業の法人部門の成長が「新・中期経営計画」達成の鍵であり、そことの連携によりソリューション事業の案件創造に繋げたい。ソリューション事業の売上構成比を4割以上・・・本当は5割と言いたいのだが、とりあえずソリューション事業は4割以上、そしてモバイル事業は6割以下という構成比にしたい。営業利益率も、ソリューション事業は15%以上、モバイル事業は6%以上を中期目標に掲げている。このような構成になれば、当社グループとして高収益体質を構築することができるはずだ。

■「5G」により企業の価値向上に貢献できるソリューションの可能性が拡大

――クラウドソリューションをはじめ多彩な提案を行っていますね。

 【長谷川】 「ソリューション」と「モバイル」にはっきり分けて展開するのではなく、現在は両事業を融合したもの、一体となったものが求められている。先に挙げたモバイルワークソリューションもその通りで、当社が得意とするインフラやコンテンツにクラウドサービスを融合し、その活用ツールとしてスマートフォン、タブレットの導入を提案している。

 このようなイメージで将来を展望すると、超高速・大容量の通信を可能とする「5G(第5世代移動通信システム)」が2020年の商用化に向け準備が進められているが、これとともにクラウドやIoTの技術がさらに進化し、それに関連したサービスも多様化していく。当社は、パートナー企業の商材や技術、サービスを融合させて、特に法人のお客様の情報化や企業価値の向上に貢献するソリューションを提供することをミッションとしているので、新たなソリューション創造の可能性が開けてくるとみている。「5G」には大変期待している。

■スマートフォン、タブレットなどの購入者に教育サービスを提供

 【長谷川】 また、個人向けのモバイル事業では、「実質0円販売の禁止」をはじめとする総務省の一連の施策により、販売戦略の見直しが迫られている。キャリア側も、従来の携帯電話の販売からお客様の「スマートライフ」にビジネス領域を広げているが、当社としても、法人向け事業で培ったものを個人のお客様にも展開していくなど、差別化により競争力を強化しようとしている。

 いま進めている施策の例を挙げると、今まで法人のお客様向けに提供していたeラーニングコンテンツや「情報創造コミュニティー」で開催するマイクロソフトのOffice講座などの教育サービスを、当社が運営するドコモショップでスマートフォンやタブレットをご購入いただいたお客様に無償で提供を始めた。法人向けと同様に、コンシューマー向けにもソリューションとしてハード、コンテンツ、そして利活用をワンストップで提供できる体制を構築し、幅を広げて行く計画だ。

■クラウド化に伴い多様化する顧客ニーズにワンストップで対応できる力が求められる時代

 【長谷川】 法人向けビジネスで言うと、いま「FinTech」(ICTの活用により既存の金融サービスに新たなイノベーションをもたらすもの)が話題になっている。銀行や証券会社が活用している技術というイメージが強いが、様々なシーンで新たなビジネスモデルや付加価値が生まれている。銀行や証券、カード会社などの情報を一括管理できる個人向けの資産管理サービスが普及しつつあるが、企業の会計処理も大きく変わってくるだろう。たとえば、銀行口座間で資金が移動する際、勘定の処理・・・入金だとか支払い記録などが自動的に会計処理に連動することになる。「FinTech」が発展することによって、企業の業務も効率化され、こうした変化に対応する基幹システムというものが重要になってくるだろう。

 すでに「FinTech」に対応するソフトも開発されているが、こうした最新のシステムが導入される局面では、まず大企業で普及し、次に中堅・中小企業という順になる。当社は、人材不足やコスト増などの理由で自社では対応が難しい中堅・中小企業こそ企業価値を向上させるための情報化が急務であるという信念から、中堅・中小企業を支援する姿勢を創業時より貫いている。

 また、社内サーバー上で構築していたシステムを、専門事業者が提供するクラウド上に移行させる「クラウド化」に関する引合いが非常に増えてきている。以前ならパソコンやサーバーにインストールしたアプリケーションを使っていたものが、いまはクラウド上にデータを保存し、クラウド版のアプリケーションを使用する企業も増えてきた。設備の運用・管理などの負担もなく、導入時のまとまった設備投資も不要で、マイクロソフトの「Office365」のようなグループウェアサービスの利用により、業務に必要なメール、ファイル共有、業務管理、ワークフローなどの機能も使える。

 こうした時代になると、ソリューションベンダーにはクラウドの構築の技術やノウハウが求められるとともに、活用提案や運用管理、教育サービスといったことまでワンストップで対応できる力が求められる時代になっている。

■株主還元は配当性向30〜40%を目途に、優待品の拡充も検討

――株主還元についてのご方針などをお聞かせ下さい。

 【長谷川】 株主還元については、従来のスタンスを踏襲し、業績によって大きく振れることなく、安定した金額水準を維持しながらも、配当性向30〜40%を目安に配当を継続する方針だ。また、創業者の出身地の銘柄米を株主優待品としているが、コスト面も考えながら株主様の声を反映し、充実を図る方針だ。

 自社株買いについては、流通株式が少ないのでなかなかできないなど課題はあるが、可能な限り株主還元を視野に置きながら経営の舵を取って行きたい。

■10月には「情報創造コミュニティー」などが移転し、一段と戦略的に展開

――この秋には、「情報創造コミュニティー」や「ドコモショップ茅場町店」の移転が予定されていますね。

 【長谷川】 入居先ビル建て替えのため、2014年から「情報創造コミュニティー」やドコモショップのほか、モバイル事業の法人営業部門が日本橋茅場町に移転していたが、まもなく工事が完了し、この10月には元々あった中央区八丁堀に戻って営業を再開する。

 「情報創造コミュニティー」は、お客様とパートナー企業との共創の場と位置付けている。フロア面積は現在の約2倍に拡大し、従来のソリューションスクールやデモルーム、ミーティングスペースに加えて、これらとほぼ同じ広さの多目的スペースも確保し、お客様やパートナー企業とともにそれぞれの創造性を発揮するスペースとして活用する予定。

 また、仕入パートナーだけでなく、今後は販売面でのパートナーをもっと開拓する必要があると考えている。販売パートナーとの共催イベントなども積極的に行っていきたい。

 当社は「情報インフラ」「情報コンテンツ」「情報活用」という3つの分野の課題をワンストップで解決する「経営情報ソリューションサービス」を展開しているが、新施設の完成によって、情報活用ソリューションや情報活用教育サービスを今まで以上により積極的に展開することが可能になり、「情報創造コミュニティー」をいかに活用していくかが課題になる。

――ありがとうございました。(HC)

 ◆長谷川新社長の略歴◆
 ・昭和54年4月:商工組合中央金庫に入庫
 ・平成16年7月:八戸支店長
 ・平成19年7月:審査第2部上席審査役
 ・平成19年9月:新木場支店長
 ・平成22年4月:協立情報通信入社、関連業務部長
 ・平成24年4月:取締役 関連業務部長
 ・平成25年5月:常務取締役 管理部長
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:57 | IRインタビュー
2017年05月24日

【インタビュー】ピクスタの古俣大介社長に聞く

ピクスタ<3416>(東マ)

好調な既存事業「PIXTA」の利益を活用し
海外・新規事業への横展開を図る


■写真・イラスト・動画素材のマーケットプレイスを運営、海外展開や新規事業への積極投資も

 ピクスタ<3416>(東マ)は、写真やイラスト・動画素材のオンラインマーケットプレイス「PIXTA」の運営で急成長している。プロ・アマ問わずクリエイターとして写真などのデジタル素材を投稿でき、デザイン制作会社やメディア等の企業を始めとする購入者に購入されれば、それに応じた報酬が発生。登録クリエイター数は22万人以上、販売中のコンテンツ数は3年で2倍以上の2400万点に達している。シンガポール、台湾、タイに海外拠点を置き、2017年3月には韓国企業の子会社化も実施。16年には新規事業である出張撮影マッチングサービス「fotowa(フォトワ)」を開始。17年12月期は積極的投資による減益を計画するが、同社・古俣大介社長(写真)は「順調に成長している国内既存事業の利益を海外展開・新規事業への投資に回すことで、飛躍的な成長を目指す」と話す(敬称略)。

pix11.jpg

■「PIXTA」コンテンツは3年で2倍以上に増えダウンロード数は24倍に急増

――「PIXTA」というビジネスモデルを創案したキッカケを教えてください。

 【古俣】 「ビジネスモデルを検討していた2000年台前半当時は、デジタル一眼レフカメラが大ヒットしていた。また、インターネットがブロードバンドに切り替わった時期でもあり、クオリティの高い高画質なデジタル写真をアマチュアの方々がネット上の掲示板に投稿し始めていた。その新たな動きに気づき、数多くの埋もれている才能が世の中でもっと活用される場を作りたいと考え、2006年に「PIXTA」を始めた」

■インバウンドも追い風になり海外から「日本の風景」などへの需要が増加

――私が旅行で撮った写真なんかでもいいのですか。

 【古俣】 「PIXTAでは、一定のクオリティ、権利侵害がないこと等の条件を満たしていればどなたでも素材の投稿、販売が可能。観光地の風景等の写真や動画は、旅行会社等にニーズがあり、メディアでも取り上げられやすい。また、日本の観光地や和食、日本文化のイメージ素材が海外企業などから注目され、インバウンドの旅行案内などに使われるということも増えている」

――人気の高い写真、使われやすい写真の傾向は・・・・。

 【古俣】 「あらゆるジャンルの素材が売れているが、最もニーズが高いのは人物素材。たとえば、ビジネスマンの走っているシーンや、握手しているシーン。家族がだんらんしている光景や、子供が遊んでいるシーン等。人物が写っている写真は広告イメージ等としての訴求力が強く、また撮り下ろしのコストが高いこともありニーズが高い」

 「商品戦略としては、網羅性、つまりあらゆるジャンルのニーズに応えられるようにしていくことを重視している。品揃えの充実が競争力につながるため、投稿者をいかに増やし、活性化させていくかも重要になってくる。PIXTAでは投稿クリエイターに対し売れ筋や撮影・制作に役立つ情報の提供や撮影サポート等を継続的に行っている。こうした取り組みにより強固なクリエイター基盤を築いていることが我々の強みになっている」

 「2017年4月末現在、「PIXTA」には国内・国外のクリエイターから毎日数万点のデジタル素材が投稿されており、クリエイター数は22万人以上になった。また、コンテンツ数は年間600万点から700万点ずつ増加し、足元では2400万点を超えている。」

 「一方、素材を利用する側のニーズもここ数年で飛躍的に高まり、多様化してきている。スマホを中心とするデジタルデバイスの普及とそれに伴うデジタル広告市場の拡大により、素材を高頻度で大量に使いたいというニーズが増えてきている。また制作会社や広告代理店、企業のデザイン部門といったヘビーユーザーに加え、企業の営業、広報、SNSマーケティング担当者や個人事業主など、本来デザインを専門としないいわゆるライトユーザー層へも素材利用の裾野が広がっている。プレゼン資料のビジュアル化やオウンドメディア・SNSを活用したマーケティング手法の普及に加え、近年の著作権に対する企業のコンプライアンス意識の高まりが素材の活用を後押ししていると感じる。

 「PIXTA」ではこのようなニーズに応えるべく、2014年から定額制販売を開始した。これは、素材を頻繁・大量に使いたい購入者向けに、定額で一定点数の素材を割安でダウンロードできるようにしたもの。定額制販売の利用は開始以来顕著に増加しており、今年は従来の単品販売から定額制販売へ重点をシフトし、プランの充実や訴求強化に注力していく。

 「PIXTA」のダウンロード数は3年で24倍に急増しており、加速度的に増えている。コンテンツ数が充実するほどに写真などの利用者・購入者が増加し、さらに投稿が活発になるという好循環が生まれており、今後もこのペースがさらに加速していくとみている」

――海外展開についての展望はいかがですか。

 【古俣】 海外展開は、アジアNo.1のクリエイティブ・プラットフォームになるという展望を掲げている。この事業は、欧米においては既に市場が成熟しており、強力なプレーヤーも存在している。一方、アジア地域は広告市場をはじめとした市場の伸びしろが大きく、目立ったローカルプレーヤーはまだあまり存在していない。特に台湾や韓国は地理的・文化的にも近く、日本の素材がそのまま受け入れられやすい土壌もある。そういった市場に速やかに参入し、アジア各地域でトップシェアを握りたいと考えている」

 「現在、シンガポールをアジア展開の統括拠点とし、台湾とタイに販売拠点を置いて営業・マーケティング活動を行っている。さらに今年3月に韓国のストックフォト会社を子会社化し、現在韓国語版PIXTAのサービス開始に向けて準備を進めている。韓国の市場は数年前の日本の状況とよく似ており、まだ、低価格で膨大なコンテンツを提供できるローカルプレーヤーがいないので、非常にチャンスな状況といえる。うまく参入できれば、日本に次いで大きな売上を生み出せる拠点になるとみている」

■PIXTAのノウハウを横展開した新規事業「fotowa(フォトワ)」

――2016年2月に出張撮影マッチングサービス「fotowa(フォトワ)」を開始したと聞きました。

 【古俣】 「「fotowa(フォトワ)」は、写真を撮ってほしい人とフォトグラファーをつなぐ出張撮影マッチングサービスで、七五三やお宮参りなどさまざまな行事の際に、好きな時間帯・好きな場所でカメラマンに撮影してもらうことができる。予約・納品はインターネット上で行われ、追加料金のない一律価格で、デジタルデータを納品してもらえることが大きなメリット」

 「近年、インスタグラム(注:写真や動画などを投稿・共有できるサービス)などSNSの普及により、いわゆる“SNS映え”する写真がトレンドとなっている。それに伴い、子供や家族の写真についても、従来の写真館でよく撮影されるようなかしこまった写真ではなく、ナチュラルで自然体な写真が好まれるようになってきた」

 「従来の写真館では、写真のテイストの選択肢に限りがあることに加え、納品される写真の形態が紙焼き等に限定され、データをもらうためには追加料金がかかるなどの「負」の側面もある。こういった「負」を解消するため、fotowaでは一律料金・完全データ納品でサービスを提供している」

 「fotowaは昨年2月に首都圏でサービスを開始し、今年から本格的に全国展開を開始した。予約、撮影件数も順調に増加している。今年はさらにプリント機能など付加機能・サービスを充実させてより多くの方に使っていただけるサービスに成長させていきたいと考えている。事業展開にあたっては、PIXTAで培ったプラットフォーム運営ノウハウやクリエイター基盤を活かしている」

■今期を「積極投資の年」と位置づけ、戦略的な減益を見込む

――業績展望などについてお伺いします。

 【古俣】 「昨年から今年始めにかけて着手した新規事業や海外展開は、いずれも市場環境の変化を逃さず、チャンスをとらえて実施できたと思っている。これらを、今後しっかりと軌道に乗せ、既存事業の成長だけでは実現できないレベルの大きな成長につなげることが当面の重点施策だ。今期(注:2017年12月期)の連結営業利益や経常利益の見通しを前期比約7割減としたのは、こうした戦略に基づくものだ。連結売上高は前期比37.3%の増加を想定している」

 「新規事業を一切やらないということであれば、収益面では年間、数億円ずつ積み上げていくことができる。だが、それだと伸びとしては想定できるものになってしまう。また、既存事業を粛々とやっているだけでは、かつてプロ中心の写真素材の世界にPIXTAが登場したときのような、大きな時代の変化や、新しい潮流に対応できない可能性がある。自分たちで市場を作っていく、市場に変化を起こす、というつもりで、積極的に新規の分野に取り組む方針で戦略を組み立てている」

 「新分野への取り組みは、市場の変化にともない新たなニーズが顕在化しているところをとらえて行っているので、成功への自信を持っている。既存事業のトップラインは順調に伸びているので、その成長を加速させながら、数年後にさらなる増益体制の確立を目指している」

――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:10 | IRインタビュー
2017年05月11日

【インタビュー】メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に聞く

メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)

医療データの2次利用を促進する新法は大きなフォローに、「次世代医療基盤整備法案」4月28日に可決、成立

■マーケットを大きくしてもらいながら競合は現れない時期がしばらく続く可能性

 4月28日に、新薬開発や新たな治療方法の研究に役立てる目的で医療データの2次利用を促進する「次世代医療基盤整備法案」が、参院本会議で可決、成立した。公布後1年以内に施行される。メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)は、2003年の創業以来、患者や病院の同意を得た上で医療データベースを蓄積し、製薬企業などへ分析調査の結果を提供する事業を推進してきたパイオニア企業だ。蓄積したデータは17年4月末現在で実患者数1821万人分(注・16年4月末から405万人増加)に達し、国民7人に1人の割合だ。「新法の制定は、医療データの利活用に関して一層のフォローにつながる」と話す同社の代表取締役社長・岩崎博之氏(写真)に当面の展望などを聞いてみた(敬称略)。

med1.jpg

■医療ビッグデータのマーケットは2次利用の促進でさらに拡大

――医療データの2次利用を促進する新法によってビジネス環境が変わると思われます。

 【岩崎】 「われわれの事業は、医療の「質」を高めてもらう目的で、医薬品に関する分析データを製薬メーカーや研究機関等に提供する事業を展開している。これを具体的にダイナミックに進めている企業は、われわれだけだ。また、創業当初は医療情報の利活用に大きなマーケットがなかったため、僕らがデータベースを作り、新たな価値を提供する市場を自ら開拓してきた。こうしたEBM事業(注:Evidence Based Medicine:根拠に基づく医療)は、市場の拡大もあり、当社ではこのところ毎年3割増ほどのペースで拡大している」

 「そこに、今般「次世代医療基盤整備法案」で、新薬の開発推進や質の高い医療の実現を目的とした医療情報の利活用基盤を国が推進することになるのだから、おのずと医療ビッグデータのマーケットはさらに拡大していく。僕ら1社では大きなマーケットを作っていくのは難しいが、この点でビジネス環境の大きなフォローになると考えている。」

■蓄積する医療データは国民7人に1人に相当する規模の1821万人分

――新法によってライバルが現われるように思うのですが・・・。

 【岩崎】 「新法によって医療データを集めることができるのは、国が認定した事業者となる。新法では、個人情報も医療データ・診療データとして入るという。そして、個人情報はカットし、統計データとして加工して新薬開発メーカーなどに提供するという流れになる。一方、当社が蓄積しているデータは、許諾を得た病院から提供を受ける時点で個人情報はカットされており、すでに実患者数にして1821万人分、国民7人に1人の規模に達している。」

 「厳密に言うと、こうしたデータ収集については、すでに厚生労働省の事業として、2012年からPMDAという独立行政法人が始めている。この事業では、患者数にして1000万人分のデータを集める計画。この点、当社は医療機関から2次利用の許諾を受けてすでに2,000万人に近いデータを集積している。」

 「データの提供は、医療の「質」向上という大儀が前提になるが、提供する病院側に何か具体的なメリットがないと、進んで参加する事にはなりにくいのではないか。この点、僕らが蓄積するデータには、提供する側にもメリットがある。提供する病院には、当社の経営支援システムが導入されており、蓄積したビッグデータを分析できる環境を無償で提供している。また、このシステム導入の過程などを通じて、病院との信頼関係が醸成されている点も見逃せないと思う」

■医療データの利活用はデータクレンジングが重要

 「提供を受けるデータのマスターは、それぞれの病院によって異っている。各病院からデータを提供してもらえば、そのまま使えるかというとまったくダメで、そこから整理に大変な労力がかかる。僕らはデータクレンジングをイチから手がけてきた。早期事業化に向けて徹底的に頑張ったが、完成に漕ぎつけるまでには数年かかった。こうした経験を踏まえると、新法が定める認定事業者が、利活用できるデータを完成させるまでには、時間がかかる可能性がある。この点で、もし当社が経験してきたデータ整備などのノウハウを求められることがあれば、支援する準備はある。」

 「いずれにせよ、この新法によって、医療ビッグデータの利活用マーケットは確実に耕されていく。そして、当社はすでに国民7人に1人に相当する実患者数のデータを保有しているので、マーケットを大きくしてもらいながら、競合は現れてこない環境がしばらく続くとみている。」

■リアルタイムデータの集積で「治験ビジネス」へ進出

――新法によってマーケットが拡大すると、新たなビジネスの好機も発生しますね。

 【岩崎】 「近々、市場規模が2400億円ともいわれる「治験ビジネス」に進出する計画だ。当社には、データをリアルタイムで蓄積できるとともに、患者や病院の悩みを解消することを目的に開発したITシステム「CADA−BOX(カーダボックス)」があり、進出する道具建てはそろっている。CADA−BOXは、今年2017年2月、医療機関に初導入され、4月から本格的に稼動を開始した」

 「CADA−BOXは、(1)診療情報の一部(カルテ情報)が見られるインターネットサイト、(2)クレジットカード機能、の2つをひとつにした患者向けの仕組みだ。電子カルテシステムから収集・蓄積されるデータは、個人が利用を同意したもので、ほぼリアルタイムのデータになっている点が特色だ」

 「さきほど、データ収集には何か提供側のメリットが必要と話したが、たとえば患者が抱える悩みを挙げると、まず病院での待ち時間が長いという不満、続いてドクターの説明や言われたことがよくわからないという不満、そして、費用がいくらかかるのかという不安があるという3点だ。」

 「この点で、まず診療情報の提供を許諾した患者は、「カルテコ」というCADA−BOXのインターネットサイトを開けば、パソコンやスマートフォンで自身の診療情報が閲覧でき、診療明細などの印刷もできる。自身のカルテの内容が見られるので、病気のことや医師の説明もより理解できるようになる。また、CADA−BOXのクレジット機能で医療費の支払いができるので、会計窓口の前で待つ必要がない。一般のクレジットカードでは、ご高齢になると与信が厳しくなるが、病院というのは高齢者が多い。そこで100%子会社がクレジットカードのライセンスを取得し、与信などを柔軟に行っている。」

 「一方、病院にとっては、会計窓口などの業務効率化が図れ、コスト低減に役立つ。また病院としては、医療費の未収金はなかなか回収しにくいものだが、CADA−BOXのカード払いによってゼロに近づけることが可能になる。診療情報を患者と共有することによって病院と患者の信頼関係が深まり、患者や地域から選ばれる病院になる。CADA−BOXでは、患者が自身のカルテなどを閲覧できるので、家族、ご近所、知人・友人にその病院を紹介するといったことが現実に起きている。集積された医療情報は医療の「質」向上につながっていく。やはり、幅広いデータ収集にはこうした背景が必要だ。」

「こうした医療データを集積している我々は、治験分野でリアルタイムデータの利活用を考えている。治験は、まず被験者として適合する人をスクリーニングし、ドクターに頼んで被験者になるのを口説いてもらうことから始まる。たとえばある治験の項目に30人必要なら、30人集まるまで口説いてもらう。被験者が決まると投薬が始まり、一定期間後に検査し、ドクターの所見が入り、これを定期的に繰り返していく。そして治験のレポートができ上がっていく。」

 「このうち、被験者のスクリーニングは、CADA−BOXのリアルタイムデータを活用できるようになるため、被験者の決定がスピーディになるだろう。治験には、大きくみて創薬に関する治験と、市販後の調査の2つがある。小規模なデータでも実施できる部分はあり、最初はごく小規模な部分からスタートさせようと考えている。年内に参入を目指して準備を進めているところだ。」

 「こうした動きが広がるとともにデータの蓄積も進んでいる。全国344の2次医療圏の医療機関(注・都道府県が病床の整備を図るにあたって設定する地域的単位の医療機関)に広がれば、データはかなりリッチになり、あらゆる治験に対応できるようになる。」

――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:09 | IRインタビュー
2017年02月20日

【インタビュー】JPホールディングスの代表取締役・荻田和宏氏に聞く

【保育士さん不足は続くが積極採用に努め「待機児童」解消に取り組む】

jps1.jpg

◆事業所内保育施設の運営も資生堂を手はじめに拡大めざす

 JPホールディングス<2749>(東1)は、全国に保育園を172園運営するほか、学童クラブ、児童館など合計250施設(2016年12月末現在)を運営する子育て支援事業の最大手。「待機児童」の解消が急がれる一方で、東京都の保育士の求人倍率は6倍前後のため採用難。先生の絶対数が足りず、受け入れ児童数を増やせないジレンマを抱える中で、現状と展望を代表取締役・荻田和宏氏に聞いた。

◆東南アジアでは日本式の「しつけ」に評価が高くベトナムでの開設準備も進む

 ―――投資家目線で伺いますと、保育園の運営や幼児教育には様々な規制があって事業として息苦しい印象を受けますが。

 保育・幼児教育の事業には、国と自治体によるサポートというか色々な支援がある。ただ、ザックリ言えば、株式会社よりも社会福祉法人が有利な部分などがあり、かなり改善されてきたが、まだ格差みたいなものが存在することは確かだ。

 また、保育士の先生が圧倒的に足りない中で、お給料を上げましょうということで小池東京都知事も予算を取ってくれた。非常にありがたいことだと思う。が、国と自治体の制度全体を見ると少々使いにくい部分もある。これは、われわれ事業者と当局とのコミュニケーション不足があるのかもしれない。当社も内閣府とやり取りしているし、加藤勝信大臣(少子化対策、男女共同参画)大臣ともお会いしたことはあるが、もう少し意見交換する機会を設けていただければ、現場サイドで抱えている問題などをストレートにお伝えできるのではないかと思う。せっかく予算をつけていただくのだから、効率よく活用する意味でもコミュニケーションは重要になる。

◆保育士さんの給与水準は業界平均より年収ベースで30万円ほど高い

 ―――保育士さんの報酬、給与の引き上げがニュースになったりしています。御社の水準や来年度の見通しはいかがですか。

 当社の場合、保育士さんの給与は2015年時点において業界平均より年収ベースで30万円ほどは高い水準にある。まあ、その分、会社としての利益は下がっているんですが。そして、来年度も定期昇給を含めて、まだ固まってはいないが2%から3%のアップを考えている。そのぐらいの賃上げはやる予定だ。

 ―――そうすると、賃上げ効果で人手不足は解消できそうですか。

 保育士さんの採用困難が言われはじめてからもう5年ほどになる。求人倍率が毎年上がり、おととし(2015年)の求人倍率は東京都で6倍を超えた。去年(16年)も年間ではおそらく同程度だろう。けれども、当社の採用者数は、おととしよりも去年は15%増しだった。今年は、まだ採用を継続しているので固まっていないが、去年よりも着地で2割増しにはなるだろう。給与だけではないと思うが、給与アップの効果は出てきているとみている。来年も引き上げる。

 ただ、保育士さん不足は来年以降、少しは緩和するとみている。というのは、全国の事業者にいえることだが、業界はもう何年も保育所を作って数を増やし拡大してきた。しかし、これだけ採用が困難になってくると、もう増設はムリという事業者が出ている。当社も開園のペースを落としたほどだ。ハイピッチの増設が鈍化すれば、採用に関する需給は多少緩和に向かうとみている。

 ―――採用難の保育士さんですが、新年度はどのくらい採用をお考えですか。

 今年度の採用目標は新卒で250名を計画しており、最終的におそらく240名は採用できる見込みだ。来年度の計画は、今日も1時間ほど前まで会議にかけていたが、担当の方からは300名という数字が上がってきたばかりだ。これぐらい来てくださると、会社としての利益率は改善します。
 
 というのは、当社の保育園などの稼働率は現在、平均82%前後で推移している。待機している児童は多く、施設も部屋もあるんだが先生が足りない。入れたくてもお子さんをお預かりすることができない、という園がほとんどだ。この意味で、先生方が増えれば、会社としては増収増益に直結するんですよ。ただ、これは「たられば」の話で、採用できなかったら来年度も苦しい状態が続く。

◆事業所内保育所は資生堂のほかに20社以上から問い合わせが

 ―――昨年11月、資生堂と事業所内保育事業に取り組むと発表しました。

 発表後、資生堂さん以外にも20社以上から問い合わせがきている。現在、担当のスタッフが各社さんに出向いて打ち合わせなどを行っているところだ。まだ詳しいお話はできないが、資生堂さんの掛川工場よりも先行するところが出てくる可能性があるかもしれない。

 ―――海外でも保育事業を展開と聞いています。

 現在、ベトナムでの準備が先行しているほか、シンガポール、マレーシア、インドネシアではパートナー企業が見つかり、準備を進めている。ベトナムでは、まずホーチミンとダナンで開園する計画で、今日もダナンで新会社を設立する書類にサインしたばかりだ。ホーチミンの方は合弁展開だが、ベトナムの新学期は9月なので、遅くともこの頃までには第1号を開園したい。また、シンガポールやインドネシアなどではパートナー企業が各々事業を行なっているので、準備は早く進む可能性もある。

◆ベトナムなどでは日本式の「しつけ」に対する注目度や評価が高い

 印象的なのは、ベトナムやインドネシアでは、全体に親日的というか、「読み書き」などに加えて日本式の「しつけ」に対する注目度が非常に高いことだ。たとえば、掃除ができる、片付けができる、といったことのほかに、自分の靴をそろえるとか、ゲタ箱にしまうとか、何でこんな小さな子供たちがここまでできるのかと、現地の幼稚園関係者の中には考えられないといって驚く人もいる。現地の幼稚園の中でこうした教育を取り入れた所は評判で、見学に訪れる人が多い。それぐらい、日本式の「しつけ」には注目度が高い。

 このため、当社でも、英語・音楽・体操といったカリキュラムは当然取り入れるが、さらに「しつけ」の面を厚くしたい。ぜんぜん興味がないよ、といった国なら別だが、ベトナムなどでは注目度も評価も高いので、こうした教育を重視するのも大切で有意義ではないかと考えている。

 ―――ベトナムなどで保育対象とする子供はやはり富裕層ですか。

 いや、そんなことはない。ターゲットとしては平均的なサラリーマン家庭のお子さんを考えていて、収入という意味では中所得層から高所得層といったところを計画している。アセアン諸国ではお母さんも働いている家庭が多く、共働きは当たり前。こうした点でも幅広い層にニーズがあるとみている。私がお邪魔した幼稚園では、1施設に100人ほどいる幼稚園でも、もっと入りたいという子供が多く、それこそ「待機」しているような状態のところが少なくなかった。

 ―――業界の大手として、M&Aによる展開などはお考えですか。

 先生の採用がこれだけ難かしくなってくると、異業種から参入してきたところの中には厳しい所もあると思う。キッチリ運営しないと行政からの指導、お叱りもある。大変な仕事ではある。運営が厳しくなっても、閉めることができなければ売却ということになり、こうした意味での再編の動きは割と早く出てくる可能性があるかも知れない。

 現在は潜在的な待機児童数が公表数値の十数倍とみられるなど、ニーズは非常にたくさんあるのだが、長期的にみればこのまま続くわけではない。その先を展望しておくべきだと考えている。この線上にあるものが海外展開であり、新規事業として昨年着手した民間学童クラブ「AEL」(アエル)の展開だ。

 学童クラブは、これまで当社が手がけてきた事業は公的な学童クラブの運営だったが、保育園と同様に数が全く足りない状態だ。保育園の待機児童は年間約2万4000人に達しているが、学童クラブの待機児童数も同じく1万6000人から1万7000人に達していて、施設は相当に足りない。公的な学童クラブは勉強を教えたりできないので、それならば、施設の数も足りなくてニーズもあるのであれば、認可外で独自のプラグラムを導入してお子さんをお預かりしましょうということで、「AEL」(アエル)の積極的な展開を計画している。

 ―――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:32 | IRインタビュー
2017年02月09日

【インタビュー】ファーストコーポレーションの中村利秋社長に今後の成長戦略を聞く

fast1.jpg

■造注方式の分譲マンション建設に特化したゼネコン

 ファーストコーポレーション<1430>(東1)は分譲マンション建設に特化したゼネコンである。2011年6月会社設立から3年9ヶ月後の2015年3月東証マザーズに新規上場し、さらに2016年12月には東証マザーズ上場から1年9ヶ月で東証1部に市場変更した。17年5月期は豊富な受注残高を背景として大幅増収増益予想である。中期計画では目標数値に19年5月期売上高350億59百万円、経常利益30億89百万円を掲げている。強みを持つ造注方式を核としたアグレッシブな事業展開で中期成長期待も高まる。中村利秋社長に今後の成長戦略を聞いた。

■品質を重視、3項目で第三者機関の検査

――2011年6月の会社設立から、東証マザーズを経て僅か5年6ヶ月で東証1部上場を果たしました。伝統のある会社が多いゼネコン業界においては異例のスピード成長ですが、会社設立の思い、そしてスピード成長で東証1部上場を果たした感想をお聞かせください。

 【中村社長】 当社は、飯田ホールディングスグループの創業者で前会長の飯田一男氏の出資及び支援によりスタートした会社である。東証マザーズにスピード上場して、さらに今回東証1部に市場変更できたことは、偏に、社員の頑張りによるものと感謝している。

 当社が東証1部に上場できた理由は、当社が分譲マンションに特化し、さらに造注という方式だったからだと思っている。造注方式以外、すなわち競争入札方式の受注が主力の普通のゼネコンでは、たぶん上場できないだろうと思っている。なぜかというと競争入札方式では利益が出難いからだ。特殊な特許を持っていれば普通のゼネコンでも上場できないことはないと思うが、ここまで成熟した社会で普通のゼネコンが上場するのは難しいだろうと思う。

――造注方式というのは、1980年代の平成バブルの時期にゼネコンがこぞって参入した方式ですが、その後1990年代にバブルが崩壊して多くのゼネコンが造注方式に消極的になりました。今では造注方式という言葉を聞くこともなくなりましたが、そういった状況で御社が造注方式に取り組んだ理由を聞かせてください。

 【中村社長】 基本的には利益率の高さだ。造注方式というのは、当社がマンション用地を手当てして複数のマンション・デベロッパーに企画提案する。そして最も条件の良いデベロッパーを選んで特命受注する方式だ。工事採算や回収条件が競争入札方式による受注に比べて、圧倒的に高いことが最大の特徴だ。

――他のゼネコンも今この造注方式に取り組んでいるのでしょうか?

 【中村社長】 聞いたことがない。当社のように特化してやっているのは、他では長谷工コーポレーション<1808>ぐらいだろう。土地を手当てして、企画から設計、施工まで手掛けるというのは一朝一夕ではできない。我々も1980年代〜1990年代に造注で各社が失敗した例をたくさん見てきた。それが肥やしになっている。だから今できるのだ。その点では、今は相当慎重にやっている。

――最近は投資用マンションの需要が高水準のようですが、投資用マンションを手掛けるデベロッパーと土地の確保でバッティングするようなことはありませんか?

 【中村社長】 ない。分譲用マンションと投資用マンションでは条件が異なる。

――造注方式で長谷工コーポレーションと競合しますか?

 【中村社長】 直接の競合はほとんどない。長谷工コーポレーションは開発規模が大きいが、当社は30〜300戸クラスが中心だ。

――造注方式以外で御社の特徴を教えてください。

 【中村社長】 当社は品質を重視している。工事については第三者機関による検査を、杭工事、配筋工事、レディーミクスコンクリートの3項目で行っている。この3項目で第三者機関の検査を行っているのは恐らく当社だけではないかと。

――第三者機関の検査を入れてコストアップ要因にならないでしょうか?

 【中村社長】 コストアップ要因になるが、信用には代えられない。現場の数にかかわらず、全ての現場で行う。これはゼネコンとしての宿命だと思っている。また当社は造注方式で利益率が高いからこそ、検査によるコストアップにも対応できる強みがある。

――上場したことで信用力とか、デベロッパーとの取引の関係とかで、目に見えるようなメリットは出ていますか?

 【中村社長】 土地についての情報量や銀行の支援という点はかなり変わってきた。これから変わるのは人材の獲得だろう。当社の本社も4月に移転する予定で、人材獲得に繋がると期待している。

――銀行との関係ではコミットメントラインなどは契約されていますか?

 【中村社長】 特にコミットメントラインは設定していないが、必要に応じて調達が可能になっている。

■M&Aを活用して事業を拡大

――資金面は問題がないし、今後の課題は人材や施工能力ですね。

 【中村社長】 今後の成長に向けてはM&Aも活用する。エリア的には首都圏1都3県、関西、九州などで、ゼネコンや不動産に対するM&Aが出来ればと考えている。

――具体的には、中小のゼネコンが対象となるのでしょうか?

 【中村社長】 そうだ。いずれも中小のゼネコン、不動産、デベロッパー、そして賃貸も含めて幅広く考えている。

――不動産セクターのM&Aも考えているということは、今は分譲マンションを特化していますが、将来的には対象は広がっていくのでしょうか?

 【中村社長】 分譲マンションに近いものはやっていくつもりだ。シニアマンションとか老人ホームをやっていこうと考えている。既に老人ホームを2ヶ所手掛けている。これからはシニアマンション分譲事業にも参画するつもりだ。

――大型M&Aの可能性はありますか?

 【中村社長】 ないとは言えない。候補次第だ。

――成長に向けての施工能力が課題になると思いますが?

 【中村社長】 採用による生産能力の拡大を目指しているが、M&Aは、それを補完する役割である。

――中期計画(19年5月期売上高350億円)や長期ビジョン(売上高500億円)を見ると、今期(17年5月期)の予想売上高218億円に比べて、かなり高い伸び率が必要になります。投資家から「本当に大丈夫?」という印象を持たれる可能性があると思いますが?

 【中村社長】 今期(17年5月期)の業績については売上高・利益ともほぼ計画どおりで固まっている。さらに来期(18年5月期)計画の売上高276億円についても8割がた目途がついている。現在やっているのは19年5月期計画の売上高350億円に向けて、土地の手当て、企画、デベロッパーとの交渉だ。まず今期の数字がきちっと出れば、約束を守る会社と思ってもらえる。前期(16年5月期)も言ったとおりの数字を出した。

 中期計画や長期ビジョンの達成に向けて、M&Aも活用して施工能力を拡大する。それによって事業の裾野も広がる。例えばAという会社を買って、半分は現業を行い、後の半分は造注をやる。当社にはノウハウがあるから難しくない。

■長期ビジョンで売上高500億円目指す

――長期的なビジョンとして、どのような会社を目指すのでしょうか?

 【中村社長】 当初この会社を設立した時から売上高500億円の会社にしようと思った。そのためにM&Aという手段も考える。19年5月期計画の売上高350億円にM&Aは入っていないが、長期ビジョンの売上高500億円にはM&Aの想定もある。また、国内マーケットは縮小しているので、将来的には海外のマーケットに出たいと考えている。そこまでの道筋を私はつけるつもりだ。

――海外は具体的には、どの地域を考えていますか?

 【中村社長】 海外はベトナム及びインドネシアを考えている。既にインドネシアの分譲の状況と、ゼネコンの状況のリサーチを検討している。ベトナムはインフラの整備が進んでいるため有力で、すでにデベロッパーが進出している。

――最後に投資家に対するメッセージをお願いします。

 【中村社長】 株主還元は配当を基本としていたが、株主優待制度も導入した。配当性向は30%を維持する方針で、内部留保の状況なども考慮しながら、可能な範囲で配当性向を引き上げていきたいと考えている。

――貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:57 | IRインタビュー
2016年12月14日

【インタビュー】アイビーシーの加藤裕之社長に強みや今後の成長戦略を聞く

■ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー

 アイビーシー<3920>(東1部)は、ネットワーク機器・システムの稼働状況や障害発生の予兆などを監視して、情報通信ネットワークシステム全体の性能状態を容易に可視化できるネットワークシステム性能監視ツール(ソフトウェア)のリーディングカンパニーである。2016年10月16日に、創立15周年を迎え、11月28日には東証マザーズ上場から1年2ヶ月の速さで東証1部に市場変更した。同社の強みや今後の成長戦略を加藤裕之社長に聞いた。

ibcs1.jpg

――先ず、会社を設立された時の思いをお聞かせください

 【加藤社長】 私が当社を設立した2002年頃はソフトバンクがブロードバンドルーターを無料で配っていました。ちょうどブロードバンドという言葉が出てきたタイミングでした。私はLAN機器メーカーに8年7ヶ月おりましたので、そこでLAN機器の変遷を見てきました。その頃はメインフレームのダウンサイジングというのが大前提にあり、パソコンとメインフレームをつなぐとか、UNIXとパソコンを繋ぐみたいな世界です。ウインドウズ95が出て以来、インターネットプロトコルがバンドルされて、バンドルされたものがパソコンの価格の下落とともに、インターネットのブラウザーの普及に伴ってどんどん普及してくる。そのようなLAN機器の普及を長年見てきました。

 そのような中で、じゃあ何をやろうかと言ったときに、マルチベンダー構成の機器を可視化するというか、性能情報とか、ルーターの入口や出口はどうなっているのかとか、ちゃんと帯域が確保されているのかどうか。それが早い遅いとかという話もあるので、ブロードバンドみたいなものが出てくると、インフラ基盤が変わるだろう、性能状態を可視化できないとサイジングもできないし、構築・設計・運用もできないのではないかと感じました。

 そのような時代背景があったので、ネットワークインフラ全体を俯瞰できる仕組を持ち、情報を把握することができる会社が生き残れるのではないかと感じていた。そこで最初はマルチベンダーの分析・解析・コンサルティングのサービスから始めました。アイビーシーという社名はインターネットワーキング・アンド・ブロードバンド・コンサルティングの頭文字をとって「IBC」としています。インターネット周りの仕事とブロードバンドのコンサルティングができると面白いねという感じです。そこのデータを把握するのが当社の最初の動きでした。

――そういう所からスタートして今年で15年目。その間に会社は大きく変化したと思いますが、そのあたりはどう見ていますか?

 【加藤社長】 最初は商売がうまくいきませんでしたが、ネットワークインフラのメジャーな製品を誰でも簡単に可視化できる仕組みにするためにテンプレート化していきました。自社開発でツールを作り現在では108メーカーに対応しています。サーバーやネットワークセキュリティー、配電盤など、さまざまなIP化されたものを可視化する。そういった機器だとか、ソフトウェアなどを私たちは徹底的に検証して、ネットワーク系を全部押さえる、マルチベンダー対応で機種特性がわかるという点で、当初の目的通りの会社になりました。最初と異なる所はプロダクトメーカーの顔が大きくなったという点です。

 それで良かったと思います。顧客に当社のツールを置いてきて、その中で蓄積したデータを分析・解析していくと、マルチベンダーの性能情報が把握できて、実際の機器で検証させてもらったものを製品に反映していくことができます。そして顧客データや業種別データというのを、インフラの視点で見る仕組みが出来上がりました。

 考えていたネットワークインフラ系の情報を全部把握するという意味で言うと、それなりのノウハウは蓄積できています。自社開発の製品に現在108メーカーのものは全て踏襲されていて、当社にはマルチベンダー環境をいじり倒したエンジニアがいます。そのようなノウハウを持っている会社は多分当社以外に世界中探しても見つからないかも知れません。

 そうしたデータを可視化するツールをリリースして足掛け15年になります。そうすると次は情報コンテンツをどう使うかによって、パートナーやエンドユーザーとの付き合い方も変わってくる。それで変えたいと思って昨年東証マザーズに上場しました。

――そうすると株式公開されて、ここまでは会社としての創業からようやく形になったという思いでしょうか、あるいはもうそこそこできあがったという思いでしょうか?


 【加藤社長】 15年経過して株式公開してもまだまだ創業と変わりません。これからだと思っています。今後SaaSやクラウドみたいな世界になると、オンプレミスの世界とクラウドの世界を両方で見て行かなければなりません。併せて俯瞰できる仕組みが必要になると思います。そういう世界で私たちの活躍の場はもっと広がると思います。

 第4期目から新卒採用を行っていますが、その人達も育ってきて亀の歩みでやってきました。これからは大手メーカーがやらない領域とか、まだまだこれからいける領域もあると思います。製品のブラッシュアップをもっとしていければ、次の領域が見えてくる可能性はあると思います。

――将来の成長に向けてまだまだ初期の段階だということですね。

 【加藤社長】 IoTという言葉が流行っていますが、実際インターネットに繋がるものって当たり前に全てがIPなんですね。そういう意味で言うとIP化されたもので何か見る仕組みがあれば当社は可視化できます。最近だと2016年4月、アットマークテクノ社とIoTを活用した製造ラインの統合管理ソリューションで協業しました。アットマークテクノ社のIoTゲートウェイと連携し、より統合的な状態・性能監視を提供します。インターネットに繋がるプロトコルを持っているもので、可視化可能な仕組みがあれば当社は何でもできてしまいます。ツールにも反映できます。あとは統計分析とか自動分析みたいな話になると、AIと協業し、そういうファンクションを入れてしまえば当社が蓄積したデータの分析も可能になります。マルチベンダーを可視化してネットにつながるものを全て俯瞰できるようになると広がる領域はたくさんあります。

 広げ方はエンドユーザーの母数が増えたり、見る仕組みの精度が上がったり、分析・解析能力が上がったり、さまざまな業種に特化して可視化したりとか。そういうチャンスがあると、そこに性能情報なりデータ活用なり、データ分析ノウハウだったりの使い道はあります。今は漠然とネットワークインフラとかサーバーのことを話していますが、いろいろと組み合わせがあると思います。

――そうすると貴社にはまだまだビジネス拡大余地があるということですね。それなりの先行投資も必要になりますね。

 【加藤社長】 当社は「マルチベンダー」がキーワードです。社員に求めるのもマルチベンダー対応です。サーバーだけでも、ネットワークだけでも、シスコだけ知っている人でもだめです。エンジニアも営業も顧客の全体セキュリティを含めた課題を抽出しなければなりません。領域を広く・深く知らなければなりません。ツールを有効活用するための情報を、顧客からどの様に収集して、どう顧客のために提供できるかという視点で語らなければなりません。プロダクトがいいから購入してくださいでは当社の営業はできません。そのための人材教育には時間を要します。

 またステージが変わると、インフラが変わり、サービス基盤が変わってきます。営業の課題も変わってきます。そういう領域で人の採用を強化しなければなりません。新しい領域へのチャレンジに向けた人材の採用も必要です。派生ビジネスやパートナー戦略でも、ソリューションを展開できなくては自社の強みを活かす仕組みもぼやけてしまいます。そういうものを行う体制だったり、サービス機能だったり、サポート体制だったり、既存顧客のアップセルも含めて体制を築かないと、顧客企業との長いお付合いができません。そして後は、付加価値ですね。そういう意味で今年は人材採用・教育の面で積極的に先行投資したいと思っています。

――それで今期(2017年9月期)の業績見通しは先行投資負担で減益予想となったのですね。

 【加藤社長】 そうです。ただし増収基調に変化はありません。トップライン(売上高)の成長を維持しつつ、中期成長に向けて人材採用、本社オフィス増床、新製品開発に係る動作検証環境整備のためのシステム導入など、積極的な先行投資を実施するため、今期は一時的な減益を見込んでいます。また売上、利益ともコンサバに見た数字を公表しています。現状のソリューション、当社の持っている実物のプロダクトとサービスの基盤だけで今期業績予想を出していますが、何かストレッチできる面白いネタが出た瞬間に変わる可能性もあります。

――中期的な成長戦略としてサービス領域拡大を掲げていらっしゃいますが、今後のビジネス展開の中で、監視ツールのライセンス販売からシステム全体の構築・運用まで広がっていくのかどうか、その戦略をお聞きかせください。

 【加藤社長】 当社はシステム全体の構築・運用を丸受けする形になるとは思っていません。ただしマルチベンダーを可視化し、そのような基盤を情報化して握っているならば、いろんな可能性があります。したがってサービス領域を広げていきたいと考えています。

 最近ではハイブリッド型クラウド系の案件が大手企業で増えています。自治体もハイブリッドクラウドみたいな感じでサービス機能を立ち上げたりしています。そういう所にツールのチャンスや、ノウハウのチャンスがあります。データセンターとかサービスプロバイダー系でも、当社がやっている領域の付加価値をつけなければならない時代になってきています。当社のツールを活用して月額課金サービスを増やしていくようなことも考えられます。

 また新領域としてクラウド系インテグレーションを立ち上げます。11月に特化型クラウドインテグレーションサービス「SCI」の提供開始を発表しました。ハイブリッド型クラウド全体を可視化したり、仮想系の所を可視化したりするノウハウがあるので、エビデンスを持って提案できる状況になります。そうするとクラウドインテグレーションのニーズも当然増えてくると思います。さらに将来的にはAI領域でもビジネスチャンスがあるのではと思っています。

――最後に、株主還元を含めて投資家に一言お願いいたします。

 【加藤社長】 当社の事業ドメインであるIP全体を可視化できる会社は他に例がなく、簡単に他社には真似ができません。参入障壁は高いと思います。大企業相手のBtoBビジネスで地味な会社ですが、長い目で見て堅実に成長する会社として評価いただければと思っています。また東証1部に市場変更したこともあり、株主還元策を考えていかなければならないと思っておりますが、今期は始まったばかりなので、半期の状況を見たうえで考えたいと思っています。

――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:00 | IRインタビュー
2016年11月16日

【近況リポート】日本エンタープライズの子会社で電子商取引サービス『いなせり』

■プロダクトマネージャー寺尾悠氏とチーフフィッシュオフィサー松井良輔氏に聞く

 日本エンタープライズ<4829>(東1)の子会社いなせりは、当初の計画では、11月に電子商取引サービス『いなせり』をスタートする予定であったが、豊洲移転が延期されたことから、状況が変わってきている。そこで、現況を教えてもらうために、「いなせり」のプロダクトマネージャー寺尾悠氏とチーフフィッシュオフィサー松井良輔氏にインタビューを行った。「写真=プロダクトマネージャー寺尾悠氏(左)、チーフフィッシュオフィサー松井良輔氏(右)」

ina11.jpg

――豊洲移転が延期されたので、「いなせり」の開始時期も大幅に遅れるのかな、とこちらで勝手な推測をしていたのですが、御社に問い合わせたところ、ほぼ計画通りにスタートするということでしたので、取材しようということになったわけです。

 当初は、豊洲移転が11月の計画でしたので、その後に「いなせり」をスタートする予定でした。ところが移転が11月ではなくなりましたので、築地でサービスをスタートさせるということで、仲卸業者様とも近々スタートできるよう段取りをしています。サービス日が確定次第、改めてWEBサイト等でお知らせいたします。

――豊洲移転延期で、仲卸業者様も戸惑っていらっしゃるだろうと思いますが。

 周りは騒いでいますが、仲卸業者の人達はいつも通りに毎日仕事をしていらっしゃいます。仲卸業者様にとっても「いなせり」は販路拡大のツールになりますので、そういう意味では、大変好感を持っていただいていると感じています。

――分かりました、では、初めに「いなせり」のビジネスモデルについて教えていただけますか。

 「いなせり」は、インターネット上のマーケットプレイスという水産物の
売買の場を提供することになります。買い手は、飲食事業者様でございます。寿司屋をはじめとした飲食事業者様です。これらの飲食事業者様がインターネット上で、「いなせり」を見て、商品を購入する。では、誰が商品を出品するのかというと、市場にいらっしゃる仲卸業者様です。500から600いる仲卸業者様が参加して、それぞれが得意とする商品をインターネット上の「いなせり」に出品するという形になります。我々はあくまで、その取引の場を提供します。周辺のサービスでは、決済周りとして、ソニーペイメントサービス株式会社様とアライアンスを結んでいます。集荷、物流周りは、地域毎に最適な物流会社様に振り分けていく形となっています。築地で、生鮮食品を扱っていますので、飲食事業者様には、その日に品物が届くということをサービスの肝としております。そういう意味から、サービスはまずは関東エリアからスタートすることになります。

――午前2時が注文の締め切り時間ということですが、少し早いのではと思ったのですが。これは、市場関係者の方々から見れば、普通のお時間という感覚でよろしいのでしょうか。

 そうですね、ちょうどセリが始まる時間で、物が並びだす時間です。それまでに注文が来ていれば、それを基に仕入れられるので、仲卸業者様も在庫リスクの軽減となります。

――なるほど、そうですね。

 飲食事業者様から見ても、深夜まで営業されていたり、片付けが終わった後で注文するというのはメリットがあるのかなと思っています。午前2時が締め切り時間というのは、買方からもタイミングの良い時間といえます。

――仲卸業者様は何社ほど参加されるのでしょうか。

 前回8月に説明会を行ったのですが、100社ほどは参加されました。次は今月11月に行う予定ですが、同じ数の仲卸業者様がお集まりいただけると見込んでいます。参加を表明されている仲卸業者様は1社、2社ではありませんので、十分な商品が揃うだけの仲卸業者様がスタート時から参加されると見ています。

――これまでの顧客というと、築地まで買い付けに出かけてこられましたが、それ以外の方も御社のツールを使って、仕入れることが出来ますね。

 我々は、仲卸業者様に「いなせり」を使っていただくうえで、月額費用は全く徴収しません。売れれば手数料を一部いただくというビジネスモデルになっています。つまり、仲卸業者様からしても、サイトにアップ(出品)するのは無料ですので、売れるまでは、費用は発生しません。仲卸業者様にとっては、売れるというチャンスしかありません。売掛についても、アライアンス企業によって保証しますので、新規の顧客の与信を気にする必要もありません。そのため回収リスクもありません。

――新規の顧客という話が出ましたが、現在、築地市場の取引高は少なくなっていますね。

 はい、そうです。そのため、仲卸業者様の中でも、何とかして新規の取引を増やしていかなければならないと意識していらっしゃる人達は多いといえます。

――では、最も大切な、「いなせり」のシステム自体は既に完成しているのでしょうか。

 ほぼ完成しています。こちらが買う側(飲食事業者様)が見る画面です(タブレットを見せてもらう)。

――きれいに見えていますね。

 こういった形で出品していただきます。写真の下に仲卸業者様が説明文を入れたりします。項目も、天然、養殖といったり、出荷時の温度帯であったり、刺身用であったり、煮つけ用であったり、色んな用途から絞り込むことが出来ます。

――では、もうすぐスタートするのですか。

 「いなせり」の開始時期については、現在、築地の仲卸業者様が所属する東京魚市場卸協同組合様と協議しています。先ほど申し上げたとおり、豊洲移転延期を受け、築地でサービスをスタートさせるべく粛々と準備を進めておりますので、同組合様のご承認をいただき次第、早々に開始したいと考えております。

ina12.jpg

――正月を控えて、スタート時期としては絶好の時機ですね。

 商品は、本当に良いものが揃うと思っています。「いなせり」のサイトは誰でも見ることが出来ます。ただ、買う際には、会員登録をしていただくことになります。競合他社の場合は、会員登録しないと、商品を見ることが出来ないということがありますが、当社の場合は商品が良ければ買ってもらおうと思っていますので、誰でも見ることが出来るようにしています。

――そうすると、まずは関東圏ということですが、サイト自体は全国で見ることが出来るということですから、販売エリアも全国規模になる可能性もありますね。

 そうですが、現在、登録は関東の方に限られています。商品の閲覧は、全国どこでも、海外でもできます。

――全国から問い合わせが多くなると。

 そうなりますと、早急に全国に対応していくことになります。

――システムの特徴といったらどのようなところがありますか。

 現在、全国でお魚をネット販売していらっしゃる業者様は沢山いらっしゃいます。しかし、1社でしか販売しないので、その会社が持っている種類しか販売できません。ところが、飲食事業者様にとっては、もっと他の種類も欲しいということになります。「いなせり」には、いろんな仲卸業者様が出品していますので、同じサバでも何十種類、何十社が出していますので、マッチングがうまくいくというところが最大の特徴です。

――それだけ種類が多いと、「いなせり」のサイトにアップするのに人手と時間が掛かるのではないでしょうか。

 商品の登録は、仲卸業者の方が、スマホを使って、簡単にアップでき、時間がかからないよう配慮しています。

――飲食事業者様の登録はまだ始まっていないのですね。

 いえ、すでに事前登録という形で開始しています。予想以上に登録していただいています。プロモーションをかけていないのに、多くの方々からのお問い合わせがあります。なかなか築地へ行けない関東の方も多く、そういう方々に買っていただければ長いお付き合いが出来るのではないかと思っています。

――本日は長い時間お付き合いいただき、有難うございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:59 | IRインタビュー
2016年09月16日

【翻訳センターの東社長にインタビュー】上場来初!1Q業績上振れで通期予想を上方修正

■実績が裏付ける経営者の確信と成長力の源泉――東郁男社長に聞く

 翻訳センター<2483>(JQS)は、産業翻訳を主軸に幅広い分野を対象に、外国語ビジネスで総合サプライヤーとして、約4,400社を対象にサービス提供し、売上高アジアNo.1に位置する。
 同社は、第三次中期経営計画に取り組む中で、今期業績は過去最高業績連続更新を目指す通期予想を、第1四半期で上方修正した。同社の成長力が注目される。
 「ニーズを求め意識的にアプローチし、サービスを具現化してきた歴史と体質が当社にはある。」と、静かに語る東社長の言葉に、実績が裏付ける経営者の確信と同社の成長力の源泉をみた。

hc11.jpg

――好調なスタートとなりました。印象に残ったことについて

 【東社長】 第1四半期は、翻訳事業が医薬、特許を中心に順調に推移したのに加え、コンベンション事業が大型国際会議の運営により売上、利益ともに好調だったため、上場来初めて、第1四半期での通期業績予想の上方修正を行う結果となった。
 通常、上期、特に第1四半期は顧客企業の静かな始動に連動しがちで、当社業績は下期に偏る傾向にあるが、コンベンション事業の実績がプラス効果となり、例年以上に好スタートをきることができたと考えている。

■コンベンション事業:相次ぐ案件で実績・自信積み定着図る

 【東社長】 コンベンション事業に関しては営業努力を継続させて底固めできたと考えている。今期は「国際外科学会世界総会」をはじめ開催案件の多い年であり、特にこの第1四半期は受注案件の一部で予想以上に実績が上ブレた。大規模な国際会議をスムーズに運営できたことは、次への自信となったので、今後続く予定案件を順次成功させ、さらに次の受注へと連鎖的に繋ぎ定着させたい。

■「お客様に何が一番いいのか」営業担当が意識してきた

――進行中の三次中計の狙いが浸透し、早くも成果が見られると聞きました。

 【東社長】 三次中計には中核となる3つの施策がある。その一つ、翻訳事業での「分野特化戦略」への取り組みが順調だ。従来の「拠点別」営業展開から、同じ分野であれば全国的に展開する戦略に変え、統一した戦略、施策を実施するよう転換したが、医薬分野での案件で、東京で成功したノウハウを大阪で提案したところ複数件の成果が出るなど、具体的な効果が出はじめている。
 仕組みの変更は大仕事だ。営業担当はそれぞれ目標を持ち達成意欲が強いので多少の軋轢は覚悟したが、各営業部長が先頭に立って施策を推進した成果であり、「お客様にとって何が一番いいのかを考える」ことを各営業担当が意識しはじめたことの表れだと理解している。

■関連サービスのトータル提供、それが威力!「グループシナジーが出てきた」

 【東社長】 「グループシナジー」については、翻訳、通訳と派遣の各事業が共同して顧客対応し、受注のない企業・部署からの受注、少量受注企業から受注量のボリュームアップなど、シナジー効果が出ており、いい傾向にある。2012年にISSがグループに加わり、翻訳だけでなく派遣、通訳、コンベンションなどの外国語に関するサービスをトータルで提供できるようになったことが成果として大きく表れているのだと思う。

――会社全体が違和感なく一体化した。要因はどこにあると考えますか?

 【東社長】 医薬分野の専門翻訳会社としてスタートして以来、顧客ニーズを求めた取り組みを進め、工業分野にニーズがあれば工業も展開し、工業や医薬それぞれの業界で特許に関連するニーズがあれば特許にも参入、さらに金融業界にニーズがあるとわかれば金融分野も展開するなど、ニーズを求めて意識的にアプローチし、サービスを具現化してきた歴史と体質が当社にはある。
 また、通訳事業で長い歴史とブランドを持つISSとタイミングよく出会ったことで、事業を多角的に展開する転期になったと考えている。

■経営環境は当社にとってプラスだ

――世界的な経営環境の不透明感があります。貴社にとってプラスかマイナスか?

 【東社長】 全体的にはプラスとみている。リーマンショックの時は、金融分野が直撃を受け、景気に左右されにくい医薬など他分野でカバーし、事業の多角的展開よるメリットを享受した経験がある。経営者としては、業務効率、生産性の向上を図ることが基本だ。同時に、労働集約型の当社にとっては、売上増に耐えられる組織の構築が必要だ。

――環境をプラスにみている理由は

 【東社長】 海外から日本への輸入、逆に日本から海外への輸出、その両面で翻訳、通訳のニーズは存在するからだ。昨今旺盛なインバウンド需要もプラス要因といえよう。

■確定受託が続き今期業績アップに期待拡がる

――最後に、今後を占うトピックスを聞かせてください

 【東社長】 期待できる案件が進んでいる。コンベンション事業では秋に「国際外科学会世界総会」という大きな国際会議が控えており、翻訳事業では工業・ローカライゼーション分野でIT系大手メーカーから大型案件の受注が確定しているほか、昨年8月に業務提携したユースエンジニアリング社との共同営業でマニュアルの多言語翻訳を一括受注している。

――有難うございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:57 | IRインタビュー
2016年08月31日

ファンデリーの代表取締役阿部公祐氏に近況と今後の見通しを聞く

 健康食宅配サービスのファンデリー<3137>(東マ)は、15年6月に上場した企業で、ビジネスモデルがユニークであり、社会貢献度が非常に高いことから、注目を浴びている。そこで、近況と今後の見通しについて、語ってもらった。

fande1.jpg

――創業される以前はどこにいらっしゃったのですか。

 【阿部代表】 保険会社にいまして、損害保険の代理店設置を提案する仕事をしていました。

――その中で健康の大切さを考えて、起業されたのですか。

 【阿部代表】 保険会社の仕事とは直接的には結び付いていないのですが、社会問題を解決していくことをやりたいと考えていました。その中で、生活の基本である衣食住のうち、「食」で社会貢献につながる健康食の宅配サービスを始めました。
私は、社会に貢献するということに対して、小さい時から意識が高かったと思います。また、チャレンジすることが好きでしたので、新しいビジネスモデルを考えて、多くの人たちに喜んでもらえたらよいなと思っていました。60歳になっても、70歳になっても元気に働ける健康な人が増えたら、豊かな社会になると考えました。
保険会社で営業を担当している時に、多くの経営者の方にお会いしました。皆、目が輝いていて、常に前向きで、経営という世界に魅かれたのも起業につながりました。

――昨今の健康意識の高まりや少子高齢化を考えますと、ある意味では時代の流れに即した、非常に将来性のあるビジネスと思われますね。そこでお聞きしたいのは、御社のビジネスモデルです。

 【阿部代表】 MFD(メディカルフードデリバリー)事業とマ――ケティング事業という2つの事業を展開しています。MFD事業は健康食通販カタログ『ミールタイム』『ミールタイム ファーマ』および健康食通販サイト「ミールタイムネット」を通じた、健康食の宅配事業です。マーケティング事業は前述のカタログ誌面の広告枠販売やサンプリング等の業務受託、健康食レシピサイトの運営を行っています。
MFD事業は、2004年に健康食通販カタログ『ミールタイム』を創刊し、全国の医療機関や調剤薬局など、約18,000か所の紹介ネットワークを、10年かけて構築しました。この紹介ネットワークを通じて、生活習慣病の患者様や食事制限が必要な方々に、管理栄養士が開発した健康食をご紹介しています。また、当社のオペレーターは全員、栄養士か管理栄養士ですので、健康食のご注文の際に必ず、お客様の血液検査数値や食事制限数値をお伺いし、お客様一人ひとりに合わせたメニューをご提案させていただく、カウンセリングサービスに注力しています。
もう一つのマーケティング事業は、食品メーカー等のマーケティング活動を支援するビジネスです。
大きく分けて3つありまして、一つ目は、カタログ誌面の広告枠販売です。カタログ『ミールタイム』および『ミールタイム ファーマ』を手に取る方の多くは、 医療機関に通われている患者様です。これらの方々は、食品メーカー等の販売する健康志向商品の顧客層と合致しますので、顧客に直接訴求できる有用な媒体です。
二つ目はサンプリング等の業務受託です。『ミールタイム』を無料で配布いただいている全国の医療機関を中心とした紹介ネットワークを活用して、食品メーカー等のサンプリング業務を受託しています。医師、栄養士の方からリコメンドされるため、効果的なマーケティングが可能となります。
三つ目は、健康食レシピサイトの運営です。食品メーカー等の商品を使用して、エネルギーや塩分等に配慮した健康食レシピを作成し、レシピサイト『はちまるレシピ』にて紹介するサービスを提供しております。
レシピは、当社の紹介ネットワークで活躍されている管理栄養士の方に考案いただいており、食事療法をされている生活習慣病患者様でも安心してお召し上がりいただけます。
これら2つの事業を合わせ、当社の経常利益率は3年連続で16%となっています。その理由は、『ミールタイム』および『ミールタイム ファーマ』カタログの制作費用を、マーケティング事業で獲得した広告料で賄い、かつ、制作したカタログを、紹介ネットワークの医師や栄養士、薬剤師の方から無料で配布していただいているからです。
医療機関としては無料で使える食事療法の情報メディアということで、喜んで活用していただいております。

――掲げていらっしゃる、一食二医も当初からの考えで取り組まれたのでしょうか。

 【阿部代表】 当初から持っていました。ただ、スローガンとして掲げたのは、5年ほど前からです。
これだけ専門家である医師や栄養士、薬剤師の方が活躍していて、健康に関する情報があふれているのに、何故、生活習慣病の方が増えるのでしょうか。
医療機関には、基本的にお薬で患者様を健康にしていこうという考え方があるように感じます。私の考えは、まず自分達で出来ることは、自分達でやろうということです。「体が悪くなったから、すぐに病院に行ってお薬をもらおう」ではなく、「まず第一に食事コントロールが大切で、それでも困難なときに医療機関に行く」、その様な社会に変え、皆で持続的な社会をつくりたいと考えました。それで、一食二医という明確なスローガンを出しました。

――今ちょうど厚生労働省が進めている医療費抑制政策の基本的な流れにぴったりといえますね。

 【阿部代表】 そうですね。医療費の抑制に貢献できれば、と思っています。

――今期も最高益更新予想で順調ですね。先日発表された2017年3月期第1四半期の業績も良かったですね。

 【阿部代表】 はい。おかげ様で、前年度からしっかりと伸びています。売上も18%増です。

――現状と今後の事業拡大に向けた取組について教えてください。

 【阿部代表】 MFD事業については、医療機関を訪問する回数を増やしています。当社が顧客を獲得するのは主に医療機関からのご紹介ですので、医療機関との関係を強化していけば、売上が拡大します。今期は、医療機関で実施されているセミナーや勉強会へと積極的に参加し、『ミールタイム』の良さを着実に伝えていくことに注力しています。

――食材価格の変動が御社の業績に与える影響について教えてください。

 【阿部代表】 食材の価格が多少変動したとしても、調整できていますので、業績に対する影響はほとんどありません。例えば、ある食材の値段が上昇した場合、他の食材を使用するなど、状況に応じて対応しています。当社の業態は、食材の価格に影響されると思われがちですが、実際の影響はほとんどございません。

――競合他社と御社の取組の違いはどこにありますか。

 【阿部代表】 健康食や健康志向の高い食事の宅配業者は多数ありますが、栄養士がお客様の血液検査数値や食事制限数値をお伺いし、お客様一人ひとりに合わせたサポートに注力しているのは当社のみであると考えています。
よって、お客様へのサポート力の高さが、他社とは異なります。
また、当社は広告でお客様を獲得するという方法は重視せずに、紹介ネットワークを活用したビジネスモデルで獲得する方針です。

――中期的な目標として、売上の目標値というものはありますか。

 【阿部代表】 売上高については、まずは100億円を目指します。そのために、毎期10%を上回る売上をしっかりと積み上げていきます。

――投資家の皆様に、御社の強みをアピールしてください。

 【阿部代表】 当社が圧倒的に強いのは、お客様を獲得するビジネスモデルです。医療機関とのネットワークがありますので、広告、チラシ等の広告宣伝費を使わずにお客様を獲得できます。これにより、3年連続で、経常利益率16%を確保し、有利子負債ゼロで事業を展開しています。加えて、栄養士の専門性です。医療機関とのネットワークを構築しながら、栄養士のサポート力を保有しているビジネスモデルは、他社では追随出来ないのではないかと自負しています。

――具体的に御社の健康食を食べて、数値が改善した例などありますか。

 【阿部代表】 沢山あります。「3カ月で体重が10キログラム減った、中性脂肪が半分になった」や、「透析に入るのが5年先に伸びている」など、当社の健康食を継続している方々から喜びの声が多く寄せられています。

――最後に、御社の今後の方向性を教えてください。

 【阿部代表】 ヘルスケアの総合企業になりたいと思っています。当社は「食」から健康をサポートしていますが、健康管理サイトや本の出版、スポーツ事業、病院設立など様々な事業を展開していきたいと考えています。将来、日経平均採用銘柄の225社に選ばれるような会社になることも大きな夢ですね。

――本日は、長い時間を取っていただき誠にありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:47 | IRインタビュー
2016年07月20日

イワキの岩城慶太郎社長に聞く

iwaki1.jpg

イワキ<8095>(東1・1000株)

■取引先の課題解決に向けてあらゆる情報・機能を提供する、「策揃え」へビジネスモデルを転換

――2025年へ向け、中長期ビジョンのVision『i―111』を推進中ですが、基本戦略の一つに、『策揃え』企業になる、と打ち出されています。目を引く言葉ですが、どのような戦略ですか。

 【岩城副社長】 商社にとって、「品揃え」で取引先に満足してもらうことは大切な使命です。当社もこれまでは、「品揃え」をビジネスモデルとしてやってきましたが、創業100年を越えたことを契機に、取引先の課題解決に向けてあらゆる情報・機能を提供する、「策揃え」へビジネスモデルを転換、お取引先のニーズにワンストップで応える体制を構築し強化し当社グループの成長を目指すという考えです。「品揃え」というと、自分基点の意識となって、取引先ニーズの視点が欠けます。とくに、競争と社会変化の激しい今日、取引先の課題解決をする「技」を提供していくことこそが当社グループの使命であり、社歴100年を越え、さらに成長を目指すには、「品揃え」から、「策揃え」へ積極果敢にビジネスモデルの転換を図っていきます。中長期ビジョン策定の過程では、基本戦略に「ワンストップで提供」ということも考えましたが、ワンストップは多く使われていますし、100年越えの当社には、「策揃え」の言葉がピッタリだと判断しました。

――中長期ビジョンの中で、もう一点、数値目標として、「ROIC10%」の達成を掲げておられますが、通常、使われる数値は、ROEが多いと思いますが、なぜ、「ROIC」ですか。

 【岩城副社長】 私は、外資系コンサルタント会社出身ですが、その頃から企業経営の判断にROIC(投下資本利益率)の重要性を強調してきました。ROE(株主資本利益率)は、単一的な事業で規模の大きい企業には適していますが、中堅企業や事業数の多い企業にはROICで判断するのが適しています。当社グループは細かく分けると約20のビジネスを展開しています。ROEのような全体的な捉え方だと、個々の取引先との取引内容がどうなっているかを把握することができません。ROICであれば取引先ごとに売掛債権や買掛債務を把握することが可能で、しかも共通の物差しとして使うことができ公平です。先ほど説明しました、「品揃え」から、「策揃え」戦略にも通じるものです。

――中長期ビジョンの概要をお願いします。

 【岩城副社長】 創業111年を迎える2025年11月期へ向け、中長期ビジョンを今年1月に策定しました。スローガンは、Vision 「i―111」です。同時に中長期ビジョンを達成するための具体的計画を明確化することを目的に2016年11月期から18年11月期までの3カ年の新中期経営計画も同時に策定しています。スローガンの、「i」は、社名の頭文字を示すだけでなく、次の4つの基本理念を含んでいます。<1>Intelligence(取引先の課題を深く洞察・理解し付加価値のある解決策を提供する)、<2>Innovative(革新的なアイディアや技術に基づくビジネスモデルを通じてナンバーワン事業を創出する)、<3>International(国内で培ってきた事業ノウハウを積極的に海外市場に展開する)、<4>Investment(投下資本利益率を意識した上で機動的な経営資源の最適配分・投入を行う)という内容です。また、「111」は、創業111年を迎える2025年11月期に向けたビジョンであることを示しています。

――111という数字が印象的です。

 【岩城副社長】 そうです、111を意識したものです。定性的ターゲットとしての『111』は、創業111周年(2025年11月期)になっても、『100年超』の老舗企業としての企業文化や価値観を共有しながら、『1つのチーム』として一体感をもって、Customer『1st』を貫きます。一方、定量的ターゲットとしての『111』は、創業111周年までに、『連結売上1000億円』、『No1マーケットシエア』、ROIC『10.0%』を達成することを掲げています。

――足元の業績と中期経営計画の目標をお願いします。

 【岩城副社長】 健康食品原料はインバウンド需要が落ち着いてきたことやヒット商品の一巡などから芳しくありませんが、ジェネリック医薬品と同原料が引き続き好調で2016年11月期・第2四半期は前年同期比で減収減益でしたが従来予想は大きく上回りました。とくに、営業利益は1月14日に公表した1億3000万円を上回り3億3100万円(前年同期比16.8%減益)となりました。通期では売上1.0%増の560億円、営業利益51.9%増の8億5000万円、1株利益13.3円、配当は年6円の予定です。中期経営計画で18年11月期に売上600億円、営業利益10億円の見通しです。

――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 16:07 | IRインタビュー
2016年07月15日

ヨシムラ・フード・ホールディングスの吉村元久社長に聞く

■食品関連中小企業を支援・活性化する独特のビジネスを展開、強い商品をいっそう強化、弱みの資金面等を補充

 ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>(東マ・100株)は今年3月4日に上場した。株価は上場後高値1320円(3月4日)、同安値818円(6月7日)、高値と安値の中間値水準でしばらくモミ合っていたが、好業績を評価して15日には1399円と一気に新高値に躍り出てきた。
 同社は特色ある商品を持つが、後継者問題等に悩みを持つ食品関連中小企業を支援・活性化する独特のビジネスを展開する。国内食品産業は事業所数、雇用者数等において最大の産業であるがその大半は中小企業。少子高齢化で市場が縮小傾向にあり、しかも、資金調達力に欠け、経営者の高齢化等から企業存続問題に直面する厳しい経営環境に置かれている。こうした、環境から同社への経営支援要請は増加することが予想され、同社ビジネスは繁忙が予想される。実際、上場後、案件数は3〜4倍に増加しているという。創業者である吉村元久社長に事業内容を中心に聞いた。

yoshi1.jpg

■グループ企業数着実な増加、17年2月期を上方修正

――御社の事業を拝見しますと、業種では証券コード番号2000番台の食品ポストですが、メーカーや商社の顔、さらに経営コンサルト、ファンドのような顔があるように思われます。上場銘柄では類似会社はないように思われます。事業の特徴をご紹介ください。

 【吉村社長】 当社は、食品の製造及び販売を行う全国の中小企業の支援と活性化を行うことが目的です。M&Aで子会社化し、子会社に対しそれぞれ営業、製造、商品開発、品質管理、経営管理など機能ごとに支援と統括を行い、各子会社の『強み』を伸ばし、『弱み』を補います。こうした仕組が当社の最大の特徴である『中小企業支援プラットフォーム』です。質問のファンド的ということはM&Aで子会社化するという点が似ているという指摘だろうと思いますが、しかし、われわれはファンドのように会社を再生したあとに保有株を売却するということはしません。あくまで、グループ化した会社と共に成長するというのが基本的な姿勢です。

――グループ企業数と代表的な子会社を教えてください。

 【吉村社長】 連結子会社は製造7社と販売2社の合計8社、非連結子会社が1社です。製造関係では、『楽陽食品』(東京都足立区)が国内5カ所の工場においてチルドシュウマイおよびチルド餃子を製造・販売していますが、チルドシウマイの生産量は年間約2700万パックを誇り国内断トツです。広島産カキを調達する独自ルートを持ち、かきフライを主力商品とする『オーブン』(愛媛県四国中央市)、創業130年の白石温麺を主力商品とする『白石興産』(宮城県白石市)、ロングランセラーのピーナッツバターを主力とする『ダイショウ』(埼玉県比企郡)、日本酒好きの方ならすぐにお分かりいただける『桜顔酒造』(岩手県盛岡市)、捕獲後すぐに船上で瞬間冷凍された冷凍マグロのみを使用したネギトロ、マグロ切り落としを製造・販売する『雄北水産』(神奈川県足柄郡)など製造6社です。販売子会社(2社)は、業務用食材の企画・販売を主とし、自社で物流機能を持たず、外食企業、スーパー惣菜、産業給食、コンビニチエーンストアベンダー、医療福祉関係、学校給食などへ直送するビジネスモデルを構築している『ヨシムラ・フード』(埼玉県越谷市)。このほかに、日本全国の生活協同組合と直接口座を持ち冷凍食品のほかグループ商品の販売も行っている『ジョイ・ダイニング・プロダクツ』(埼玉県越谷市)があります。

――6月後半に2社の子会社化を発表されました。

 【吉村社長】 6月27日に『栄川酒造』、6月29日に『純和食品』をそれぞれ子会社化する決議を決定、発表しました。栄川酒造は福島県会津地方を代表する150年の歴史がある老舗酒造会社です。主力金融機関から金融支援を受け、100%減資を行ったあと当社が出資を行い子会社とします。子会社化の後はグループの酒造会社である桜顔酒造と共に両社の販路の共有や当社グループの販路を活用することにより売上の拡大を図ります。一方の純和食品は埼玉県熊谷市に本社を置きゼリー等のデザート類やレトルト食品等の製造・販売を行っています。とくに、埼玉県食品衛生自主管理優良施設確認制度において優良施設に認定された高い品質管理体制に強みを持ちイオングループをはじめ大手スーパー量販店などのOEM生産、外食産業や贈答品市場などにも販路を拡大しています。同社の発行株式を取得し子会社化します。

――お話をうかがっていますと、すでに、子会社化された会社、これから子会社化される会社は地方型の企業ですが、いずれも特徴のある商品を持っているように思われます。なぜ、御社のグループ入りを選択されるのですか。

 【吉村社長】 指摘の通り、われわれが子会社化している企業は独特の優れた商品や技術力を持っているところばかりです。日本の食品産業はGDPの面から最大の業種であり日本が誇る基幹産業ですがその企業数の99%は中小企業が担っています。その中小食品企業にとって、少子高齢化で国内の市場規模は縮小傾向にあり、中小食品企業にとっては生き残りが難しい経営県境です。しかも、とくに、中小食品企業においては後継者不足が顕在化しています。そうした企業においては事業継承をあきらめて廃業や事業停止を選択する状況が増えていますが、当社の存在を知って事業継承の受け皿として、当社に直接、あるいは金融機関や会計事務所などを通じての案件が増えています。とくに、今年3月に株式を上場して以降、以前に比べて3〜4倍案件数は急増しています。

――冒頭での質問のファンドとは違う点をもう一度、教えてください。

 【吉村社長】 話しましたとおり、中小食品企業では事業継承ニーズが高まる一方で受け皿となる会社や組織が少ないのが現状です。この点に注目、つまり、食品の製造・販売を行う中小企業の支援・活性化を目的として当社は2008年に創業しました。大和証券事業法人部時代の経験もあります。投資ファンドは単独での高い成長と数年以内の売却を目的としていることから成熟市場にある中小企業は投資対象になり難いのです。われわれは、投資し子会社化した企業と共に成長する、ある意味、運命共同体的にやっていくというのがファンドと一番の違いです。また、指摘のとおり、子会社化した企業は地方に拠点がありますが、子会社を活性化することは地方の活性化に貢献することにつながると思っています。最近は、海外での日本食が注目されていることから今後は海外での展開にも取り組んでいきます。

――業績見通しについてお願いします。

 【吉村社長】 上場直前の2016年2月期は売上が前期比12.8%増の128億3300万円、営業利益48.9%増の3億2800万円、純益99.2%増の4億6100万円、1株利益116.6円でした。2017年2月期は、当初、売上3.2%増の132億5000万円、営業利益13.2%増の3億7100万円、純益は51.8%減の2億2200万円の見通しでしたが、グループ会社が増えたこと、既存取引先の深耕などの効果で上方修正しました。修正後の今2月期は売上149億6300万円(前期比16.5%増)、営業利益4億0500万円(同23.4%増)、1株利益55.2円の見通しです。配当は、M&A案件の増加に伴う資金需要に対応するため無配の予定です。

―ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:17 | IRインタビュー
2016年06月20日

メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に事業の特徴と展望を聞く

【メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に聞く】

■医療・健康関連のデータ蓄積と活用でパイオニア、データ保持患者数1439万人

 メディカル・データ・ビジョン<3902>(東マ・100株)は、2003年8月の設立、IT業界出身の岩崎博之社長が起業した。創業当時、医療情報を外部に出すことなど考えられなかった時代だったが、医療の質を高めるためには必ずデータ活用は必要となる時代が来ると確信を持ち取り組み、今では医療関連情報データ蓄積と活用の最大手である。データ保持患者数は1439万人と全国民の約12%に当る。現在の月間単位中心のデータからリアルタイムデータ収集に積極的な投資を行っていることで業績はいっそうの飛躍が期待される。近況と展望を岩崎博之社長に聞いた。

bb11.jpg

■リアルタイム情報収集強化で業績拡大がスピードアップ

――医療関連のビジネスということですが、事業内容をお願いします。

 【岩崎社長】 私どもの事業は、膨大な医療・健康に係るデータを蓄積し有効活用することで医療の質を高めることを目的としています。サービスは次の2つで構成されています。(1)医療情報の発生元の一つである医療機関等に向けた経営支援システムの企画・開発・製造・販売・保守業務です。それと同時に医療・健康情報を蓄積するデータネットワークサービスの提供です、(2)データネットワークサービスで蓄積された医療・健康情報をデータ発生元である医療機関等から二次利用許諾を得たうえで主に製薬会社や研究機関等の法人向けに各種データ提供を行うデータ活用サービスです。

――現在、データ入手先の病院数と蓄積データ規模はどのくらいですか。

 【岩崎社長】 今年5月末の時点でのデータ規模は247病院、疾病患者数で1439万人です。2012年の約500万人に比べ、とくに、近年、データ保持数は大きく伸長しています。また、医療機関向けのパッケージ販売を主としたデータネットワークサービスにおいて、DPC(入院時包括払い制度)の分析ベンチマークシステム『EVE』の累計導入数は769病院と民間企業では最大です。

――2003年の創業ですが、当時は医療データをオープンにするという時代ではなかったように思われますが、ご苦労があったのでは。

 【岩崎社長】 その通りです。創業当時の13年前は病院等が診療データを外に出すことはありませんで、そんなことを言ったら笑われる時代でした。しかし、当時、IT関連に携わっていた私にとっては、データを共有することは基本的なことでありビジネスの質を高めるためには大事なことでしたから、遅れている医療分野においても医療の質を高めるためにはデータの共有化時代が来るという確信がありました。ただ、創業当時は会社のブランド、人材、資金がなく創業から5年くらいは苦労しました。製品を病院長、事務長に見てもらい説明すると、皆さん、「すごい」と誉めてもらえるのですが、その次の言葉が必ず、「どこか採用しているところがありますか。近く(病院)で決まったらすぐにきてください」という。是非、最初の導入病院になって欲しいというと返事をしてもらえなくて最初は売れませんでした。ところがDPC制度が、このまま間違いなく浸透していくだろうという状況になってくるとパッケージが大きく売れ始めるきっかけとなりました。

――DPC制度がポイントのようですが、DPC制度について少しお願いします。

 【岩崎社長】 厚生労働省は2003年4月に、「医療の標準化・均てん化を図って医療の質を高める」ことを目的に、全国82の特定機能病院等を皮切りにDPC制度を導入しました。DPC制度は急性期病院(入院)において、疾患と診療行為に応じて1日当りの入院診療費を定額で計算する入院時包括払い制度のことで、入院期間が長くなるほど1日当りの診療報酬点数が低くなる仕組となっています。DPC制度導入以前は実施された一つ一つの医療行為全ての点数を合計して入院診療費を決める「出来高払い」と呼ばれる制度が導入されていましたが、DPC制度が開始されたことで急性期病院は、より効果的で効率的な診療で早期に患者を治療することが求められるようになりました。このため、出来高払い制度からDPC制度へ移行することに伴う収益への影響を分析するとともに自院の診療行為の精査を行うことで今まで以上の医療の質と経営を両立させる必要に迫られました。一方でDPC制度は、当制度を導入した急性期病院に全国統一形式による診療情報(DPCデータ)の生成とデータの厚生労働省への提出が義務づけられたため、従来は共通フォーマットがないため困難だった自院の経年変化分析が可能となりDPC制度導入病院全体のデータとベンチマーキング分析が可能となりました。

――御社では、どのように対応されてきたのですか。

 【岩崎社長】 DPC制度を導入した急性期病院に対し、制度の変更及び収益構造の変化に対応した、在院日数、医療資源、原価、ベンチマーキングなどの多角的な経営、臨床分析に基づいた医療の質と経営の両立を支援する『EVE』、『Medical Code』など、2つの主力製品の企画、開発、製造、販売、保守を提供しています。2015年度には、患者が自分自身の診療情報を保管・管理できる『カルテコ』を付帯した病院向けシステムの提供を開始しています。

――今後の展望についてお聞かせください。

 【岩崎社長】 現在の商材だけでもかなり成長はできるとみています。ただ、起業時に考えていなかったことが一つあります。今は1カ月単位のデータをお預かりし活用していますが、リアルタイムではありませんし病院にあるすべてのデータではありません。卑近な例では、血液、尿の検査結果はありますが血圧データ(血液検査に比べ血圧データはリアルである)は欠損しています。血圧データが加われば製薬メーカに提供するデータの幅が広がり、当然、売上に大きく寄与します。リアルタイムで病院にあるデータを集めることができたら最高のものになると思います。たとえば、薬の市販後調査の情報が手に取るように分かってきます。実は、この2年間、この分野に積極的な投資を行っており、「カルテコ」をフックにリアルタイムデータを入手していきます。今後はこれらのデータを活用して、例えば治験の分野にも展開できると考えています。

――今12月期の見通しは。

 【岩崎社長】 データ利活用サービスの認知が拡大し、案件数の増加とともに売上が大きく伸びていること、病院向け経営支援システム『EVE』や『Medical Code』の堅調な伸びを背景に、売上24.3%増の30億円、営業利益7.1%増の3億200万円、純益6.6%増の1億7400万円の見通しです。

――お話をうかがって売上100億円は早そうだという印象を受けました。

 【岩崎社長】 いつまでにということは申し上げられませんが、期待に沿うようがんばります。2017年からは、リアルデータ投資への回収に入って行きますから業績の伸びはスピードアップできると思います。

――ありがとうございました。

 <編集後記> データ活用が活発となっている社会で医療分野は遅れている印象がある。この点にいち早く着目され起業された岩崎博之社長の先見性と努力はすばらしい。現在は1カ月単位のデータだが、リアルタイムでのデータ収集に取組んできたことでビジネスチャンスは一気に拡大するだろうという印象を受けた。上場は2014年12月、初値は3055円だった。新規上場銘柄は必ずといってよいほど上場後の洗礼を受けるが、同社株も2015年8月には960円まで下げた。しかし、安値後の切り返しはすばらしく今年5月には4770円の上場来高値に進んでいる。今後、次々と新しい材料が顔を出してくるものとみられることから中期的には5000円台以上の相場が予想されそうである。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:41 | IRインタビュー
2016年03月18日

ヨコレイの西山敏彦社長に展望を聞く

【ヨコレイの西山敏彦社長に展望を聞く】

■『クールネットワークのリーディングカンパニー』を目指す、第5次中期経営計画推進中、目標に対し利益進捗率70%と好調

 ヨコレイ(横浜冷凍)<2874>(東1・100株)は、「冷蔵倉庫事業」、と「食品販売事業」の2つの事業を手がける。冷蔵倉庫収容能力は90万トン超の業界トップクラスを誇り、「保管・物流拠点化」と、「全国ネットワーク化」の2つの主要施策を推進することで、『クールネットワークのリーディングカンパニー』を目指している。食品販売事業では、経験豊富な営業マンが、産地や生産者の選定から仕入れ・販売までを一元管理するビジネススタイルを確立、世界に広がるネットワークを通して安全・安心な食材を提供している。昨年暮れの定時株主総会で社長に就任した西山敏彦社長は横浜銀行の出身。ヨコレイに入社して12年、冷蔵倉庫事業、食品販売事業をじっくり見詰めてきたという。現在、第5次中期経営計画を推進中で利益進捗率は目標の70%と高い。西山敏彦新社長に展望を聞いた。

yokorei1.jpg

――昨年12月の定時株主総会で社長に就任されました。横浜銀行から2003年にヨコレイへ入社され12年ということですが、今日は、新社長としての抱負と個人投資家の皆さんへのメッセージを中心にお願いしたいと思います。まず、今の気持ちからお願いします。

 【西山社長】 12年間、吉川会長(前、社長)のもとで冷蔵倉庫事業、食品販売事業をひととおり経験しました。再来年に70周年のフシ目を控えている中での拝命でもあり、よりいっそう気持ちを引き締めて経営に取り組んでいく気持ちを新たにしています。新社長として今、強く思っていることは、事業規模の拡大もさることながら、お客様に当社のハード・ソフト面の強みを実感していただき、品質において業界随一と評価される企業を目指します。

――中期経営計画推進中での社長就任ということです。

 【西山社長】 2014年10月からスタートした第5次中期経営計画『FlapTheWings2017』の計画期間は2017年9月期までの3年間です。当社が培ってきた強み・経営資源を最大限活用し、『ヨコレイならではの質の高いサービスを提供』することで顧客とのWin―Winの関係構築・パートナーシップの強化を図ります。冷蔵倉庫事業は、「保管・物流拠点化」と、「全国ネットワーク化」の2つの主要施策を推進することで、『クールネットワークのリーディングカンパニー』を目指します。食品販売事業は、安定的な利益追求を基本としながらも強みのある商材の全社的な展開を推進、海外取引も強化します。今期は第5次中期経営計画の2年目ですが、最終年度の目標達成に向けたステップとなる重要な年度となるため各施策の着実な推進に取り組んでいきます。

――数値目標と進捗状況はいかがですか。

 【西山社長】 2017年9月期の目標である売上1650億円、営業利益57億円、経常利益57億円に対し、1年目の前2015年9月期は売上1547億6700万円、営業利益38億7400万円、経常利益40億3900万円の実績でした。売上目標を昨年11月に上方修正するなど当初の計画を上回るペースの増収を達成しています。利益目標も70%を超えて進捗しており達成は十分可能な水準であると考えておりますが、引き続き目標達成に向けて邁進してまいります。

――配当は年20円を安定継続されています。

 【西山社長】 当社は、株主の皆様に対する長期安定的な配当を継続して行うことを基本方針としています。企業価値向上のために必要な設備・IT投資を考慮しつつ配当性向も意識していきます。リーマンショックで業績の停滞したときも年20円配当を継続してきました。創業70周年に向け業績を向上させ、さらに株主の皆様に報いられるよう取り組んでいきたいと思います。

――長期保有の株主が多いようですね。株主優待も魅力のようです。

 【西山社長】 株主数は前期末(15年9月期)で1万3千名あまりとなっています。長期保有の方がたいへん多く、当社に対する信頼と応援をいただいていると感謝し、期待に沿うよう気持ちを引き締めています。株主優待は、1000株以上3000株未満保有の株主様に、昨年業務提携したノルウェーの有力水産企業ホフセフ社製品「サーモン詰合せ」、さらに、3000株以上保有の株主の皆様には「北海道産のホタテ・いくらセット」をお届けしており、おかげさまで大変ご好評をいただいております。

――冷蔵倉庫事業と食品販売事業の特徴をお願いします。

 【西山社長】 現在の冷蔵倉庫の収容能力は90万トンを超えており、業界トップクラスです。冷蔵倉庫事業に求められる重要なことは、多岐にわたる中で、とくに、(1)商品の品質を損なわず長期にわたり保管できる設備と技術、(2)様々な種類と豊富な量の商品を保管できる収容能力、(3)顧客ニーズに合わせた最適な物流サービスの提供という3点です。全国を5ブロックに分け、それぞれの地域のニーズにマッチした体制を整えていることが当社の強みです。食品販売事業では、経験豊富な営業マンが、産地や生産者の選定から仕入れ・販売までを一元管理するビジネススタイルを確立。世界に広がるネットワークを通して安全・安心な食材を安定供給しています。

――前9月期の概要をお願いします。

 【西山社長】 前期(15年9月期)は、「冷蔵倉庫事業」は、入庫取扱量が3.9%、出庫取扱量が2.4%、それぞれ増加、平均保管在庫量は8.0%増加しました。とくに、畜産品の入庫が好調でした。タイの連結子会社においては14年9月期に新設したワンノイ物流センター2号棟がフル稼働となりました。この結果、同事業の売上は8.3%増と好調でした。ただ、新設した4つの物流センターの減価償却費負担と立上げ時の臨時費用により同事業の営業利益は0.9%の減少となりました。「食品販売事業」では、ホタテ・カニなどの水産品が好調で同事業の売上は9.4%増でしたが、高値推移していた食品相場に急激な円安が重なるなどの厳しい事業環境の影響で7.5%の減益となり、同事業全体としては増収減益となりました。

――今期(16年9月期)に入って足元の業績はいかがですか。

 【西山社長】 第1四半期(10〜12月)は、売上は前年同期比5.3%増の420億3500万円、営業利益40.5%増の18億2000万円と出足好調です。冷蔵倉庫事業では、14年9月期から順次稼動した4つの物流センターのフル稼働による寄与で前年同期比6.0%増収、同事業営業利益は物流センター立上げ費用が減少したことで26.5%増益と大きく伸長しました。食品販売事業においては、為替が安定的に推移したこともあり、前年同期比5.1%増収、営業利益は46.1%増益と好調でした。今9月期通期では、売上は前期比3.4%増の1600億円、営業利益29.1%増の50億円の見通しです。なお、第1四半期での営業利益進捗率は、4分の1の期間が経過した段階で36.4%と順調に推移しています。

――ありがとうございました。

 【編集後記】 本社は横浜のみなとみらいが一望できる、みなとみらいグランドセントラルタワー。社名の登記上は横浜冷凍だが、会社設立当時(昭和23年)、横浜中央卸市場で、「ヨコレイ」と呼ばれていたことから現在でも得意先、株式マーケットではヨコレイの社名で親しまれている。インタビューでは、日本の食を量と質の両面から根底で支える力強い自信と取組みが伝わってきた。株価は昨年来高値が1080円(15年12月)、同安値が782円(15年1月)で足元では1000円前後のモミ合い。今期予想EPS59.9円、配当年20円、1株純資産1185円という内容。株価に派手さはないものの、安定成長の資産株としての評価が高い。とくに、人気の株主優待を含めた総合利回り高く魅力的だ。1株純資産並みの1200円前後が見込めそうだ。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:06 | IRインタビュー