来年予想される「新たな緑茶戦争」で早くも勝利宣言伊藤園(2593) 代表取締役社長 本庄八郎 氏
「最近、タクシーに乗ったときに、運転手さんが、わが社のお茶を運転席に置いているので、どう、そのお茶はおいしいと聞きましたら、運転手さんから、ここのお茶は原料が違うんだよと言われましてね、嬉しかったですよ。もちろん、こちらの素性は知りませんからお世辞なしです」と伊藤園の本庄八郎社長は顔をほころばせる。今、伊藤園の戦略は、『土つくりからの品質第一主義』。まさに、原料にこだわっている姿勢が評価された。
本庄社長は続ける。「来年から新たな緑茶戦争が始まりますよ」――。
競争激化は大変なはずだが、表情は明るい。「話題になるほど緑茶のマーケットは拡大します。現在、コーヒー飲料の市場が年間9520億円、これに対し緑茶はまだ4530億円です。話題となることは大歓迎です」ということだ。
いま、飲料市場の流れは、1981年頃から90年頃までの「炭酸飲料の時代、95年頃から02年頃までの「コーヒー飲料の時代」を経て、健康志向の高まりを背景に「茶系飲料の時代」を迎えている。
お茶の原料についての話を少し紹介すると、茶畑の茶葉は、立春から88日目の5月2日頃にいちばんおいしく熟す。「夏も近づく八八夜」の歌の通りである。しかし、多くの場合、茶葉の形にこだわり、芽が少しでも小さいうちに収穫してしまうことが多いため味においしさが欠ける。当社は、茶葉のもっとも熟した時に収穫するからコクのある味となる。これは、国内外の茶畑農園と契約し、原料調達面で圧倒的な強さを誇っている強さと余裕によるものだ。さらに、地方自治体が稲作をしなくなった田を借り上げて当社へ貸し付ける制度が始まり、茶畑契約農家を増やし、国内大農園での生産量を現在の1665トンから5000トンとする。また、オーストラリアでの大農園が収穫を始めており、08年半ばからアメリカで現地製造する原料はオーストラリアから供給する。
緑茶のほかに新たに「水」も手掛けた。コーヒーもポリフエノールを多く含んだコーヒーの発売、オーストラリアで生産している人参を原料などに野菜飲料の強化、さらに、アメリカでメイソン社を子会社化してサプリメントにも進出した。総合健康飲料メーカーとしての地位確立を目指して歩んでいる。
その中で、やはり核となるのが「おーいお茶」。緑茶戦争において数多くのブランドが登場して消えていった中で、1985年発売以来、「おーいお茶」は同一ブランドを貫き、緑茶飲料市場のシェア40%を占めるまでとなっている。こうした自信が、来年から始まるとみられる新たな緑茶戦争でますます強さを発揮できるバックボーンとなっているわけだ。
5月からの今期(08年4月期)に入っても滑り出し好調である。「4月は業界はマイナス5%、5月はゼロといった状況でしたが、当社はそれぞれプラス9%とプラス10%で業界の伸びを上回っています。なかでも、"おーいお茶"の5月の伸びは14%です」(本庄社長)ということだ。
ところで、改正道路交通法が施行されましたが、影響はどうですか。「2人乗務体制にしました。これに伴なう費用5億6000万円は今期の予算に計上済みです。アメリカのメイソン社買収のサプリメントの売上げは発表の今期業績には入れていません。お約束した08年4月期の売上高3085億円(7.1%増)、経常利益223億円(8.6%増)は間違いなく達成できます」と本庄八郎社長は自信にあふれた言葉で締めくくった。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:09
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明るい未来へ向けて