ウルシステムズ(3798・ジャスダック)
漆原 茂 代表取締役社長
●実直な技術者こそが、お客様のビジネスに役立つITを構築できる

――ITに対して興味を抱いたのは、いつ頃ですか。
漆原社長 中高生の頃です。当時は、パソコンが登場してまもない黎明期。スーパーコンピュータに代表されるハイテクノロジーの分野は、いわば聖域でした。本物のプロフェッショナルな人しか触ることができないコンピュータを、自分も触ってみたいと強く思ったことがきっかけです。IT技術を使えば、何かすごいことができるのではないかという期待感もありました。
――その後、東京大学工学部へ進学されましたね。
漆原社長 はい。コンピュータサイエンスを学びたくて。研究室では、速度の速いコンピュータを触らせて頂けたりと最先端の技術を学ぶことができました。
――大学卒業後は、研修室へ残らず沖電気工業への就職を選択されましたが、
どのような思いがあったのでしょうか。
漆原社長 コンピュータに関する技術そのものへも、もちろん興味はありました。しかし、それ以上に"世の中に役立つ技術"に興味がありました。研究者として生きていくよりも、社会に出て自分の構築するITが世の中にどう役立つのか、貢献できるのかを考え実践していきたかったのです。
――沖電気工業時代に印象深かったお仕事について、お聞かせ下さい。
漆原社長 新規事業や新製品の立ち上げなど、ゼロから何かを生み出していく仕事が好きでした。沖電気さんは、やりたいことがある社員にはやらせてくれる風土があり、おかげで私は様々な仕事にチャレンジさせて頂くことができました。心から感謝しています。
――2000年7月に大学卒業以来、お勤めになった沖電気工業を飛び出し、ウルシステムズを起業されましたが、契機となった出来事は?
漆原社長 90年代後半に、お客様にこう言われたのです。「あなたを信頼してシステムを導入したのに、ビジネスの役に立っていない、どうしてなのだ」と。誠心誠意尽くしたのにも関わらず、です。そこまで自分を信頼して下さっていたのだと嬉しく思う反面、お客様の期待に応えられていないということがショックでした。冷静に考えた結果、自分がやりたいのは、本当にお客様に喜んで満足して頂けるITの提供だと改めて確信したのです。その実現のために、私は起業を決意しました。
●『ビジネスに役立つIT』の提供を目指し、起業
――起業しなければ、本当に顧客に満足してもらえるサービスは提供できない、と?
漆原社長 そう思いました。大手企業の場合は特に、システム構築の際に自社製品を提案の中に盛り込まなければなりません。しかし、それは、突き詰めて考えると、お客様の課題解決に最適なサービスではない場合もあります。お客様にご満足頂けるサービスをご提供するためには、中立独立の立場にいる必要があったのです。他に私と同じ考え方で事業展開している企業が存在しませんでしたので、私は自分でやろうと決意しました。ちょうど、3人目の子供が生まれて間もない時期でした。父として"正しいと思うことを、実際にやったんだ"と胸を張って子供たちに伝えたいという想いも起業を後押ししてくれたと思います。
――ウルシステムズは、お客様のビジネスに役立つITを提供する会社として成長してこられました。主にどんな分野に注力した事業展開をされていますか。
漆原社長 企業システムの中でも、受発注システムなど企業の差別化戦略に貢献する"戦略的IT"に特化しています。業種は、製造・流通・情報サービスの領域に限定。専門的な知見やノウハウをフル活用したITコンサルティングを実施しています。おかげさまで、リピート率は9割と高くお客様にご信頼・ご評価頂いております。
――現在、ITコンサルティング事業とソフトウェア事業の二本柱。売上比率は9対1ですが、2010年の見込みを教えてください。
漆原社長 今後約5年間で、コンサルティング事業を着実に伸ばしつつソフトウェア事業の売上を拡大し売上比率を1対1にまで引き上げたいと考えています。
●素晴らしい仲間とともに、挑戦し続ける
――今後の目標をお聞かせ下さい。
漆原社長 事業の成功はもちろんですが、その大前提として、技術者がイキイキと仕事ができる環境を整えていきたいと思っています。そして、最高のお客様に対して素晴らしい仲間とともに夢や可能性を語らいながら、"ビジネスの役に立つIT"の構築に挑戦し続けていきたいです。
――締めくくりに、是非、お好きな言葉を教えてください。
漆原社長 "愚直にチャレンジ"です。ウルシステムズの挑戦は、まだまだこれからも続きます。
【社長プロフィール】
漆原 茂 代表取締役社長
1965年(昭和40年)2月生まれ、東京都出身。87年東京大学工学部卒業、同年沖電気工業入社。在籍中に2年間、米国スタンフォード大学コンピューターシステム研究所客員研究員。帰国後、オープン系大規模基幹システムを多数手がけ、同社で製造・流通・公共・通信・金融サービスなどのシステム構築を実施、先端技術の導入を推進した。2000年7月に「ビジネスとITの融合」を目指し同社を設立、代表取締役就任。
●ウルシステム株式会社ホームページ
【インタビューア】
福田 貴子 生活経済ジャーナリスト
ニュースキャスター、IR記者、IRセミナーの司会者として活躍。(詳細プロフィール)