吉本興業(9665)の2006年3月期連結決算は、売上高、経常・純利益とも前年比2〜6割増の大幅な増収増益となった。制作収入の増加、タレントの出演機会拡大、劇場の興行回数の増加、DVD販売の好調、グループ企業のファンダンゴ(3797・HC)の上場にともなう持分変動益などによる。
同社とグループ企業は、タレント・マネジメント事業をベースに、番組などのコンテンツ制作も行なっており、配給・配信事業まで展開している。
同社の創業は1912(明治45)年4月。寄席経営事業としてスタートし、以降、大正年間から戦前にかけて、寄席の「チェーン展開」を行ない、漫才や喜劇など「お笑い」を核とした各種事業を行なった。戦後の1948(昭和23)年に、吉本興業株式会社となった。
6月1日にひらいた決算説明会で、吉野伊佐男社長は「当社の強みは、タレント・マネジメントと劇場運営という『情』を扱うこと。先輩タレントから後輩タレントへ受け継がれる何かや、タレントと社員、社員間の信頼関係など、90年を超える会社の歴史で培った社風も含まれる。これが当社の無形資産だ」と述べた。
同社の『情』という無形資産は、海外ファンドからも
「簡単に買収できない同社独自の特性で、もし今、1から構築するとすれば10年、20年かかるだろう」
「日本では同じビジネスモデルの競合は現れない」
「情や社風は、経理上の数字に載らない資産だ」
と評価されたという。
説明会の質疑で「『情』の時価ベースは」との質問に答えて、中多広志経営企画室長は「時価総額に換算すると、500億円、1000億円と評価していただいてもよいのではないか」と説明している。
ちなみに、同社の実際の時価総額は、6月5日の終値2440円換算で約845億円である。