2000年2月、株式会社メディバンクとして設立した。が、同じ社名の企業が存在したため、同年11月に現在の『株式会社メディビック』に商号変更した。「メディカル・バイオインフォマティクス(生物情報科学)・コーポレーション」からの造語だ。
同社グループが行っている事業は、バイオマーカー創薬支援、投資・投資育成、創薬の3つである。
バイオマーカー創薬支援事業は、遺伝子情報を始めとした生体反応の解析技術から得られた情報、すなわち生体内のあらゆる変化の指標(バイオマーカー)を利用して新薬の研究開発を支援する事業のことで、製薬企業や研究機関が主な顧客となる。
創薬事業はすい臓がんを対象とした抗がん剤の臨床開発を行っている。投資・投資育成事業はライフサイエンス企業を中心とした投資銀行サービスを行なっている。
これら3つの事業が複雑かつ巧妙に重なりあって、他社にはないユニークなビジネスモデルとなっている。
バイオベンチャーは、医薬品開発が主力で製薬企業を主要顧客とする「創薬型」、研究機関を主要顧客とする「研究支援型」、創薬型と研究支援型の特性を併せ持つ「創薬基盤技術型」の3つのタイプに分けることができるが、メディビックはその中で、一番将来が有望といわれる創薬に直結する技術を持つ「創薬基盤技術型」に属す。
現在の収益を牽引しているのは、バイオマーカー創薬支援事業と投資育成事業だ。国内外のライフサイエンス業界において、専門性の高い企業やベンチャーへ投資や提携を行なうことにより、バイオマーカー創薬支援のビジネスを加速している。すでに投資先の2社がJASDAQやKOSDAQに株式公開を行ない、キャピタルゲインを上げた。
橋本康弘社長は「優れた技術を持つ企業は、提携先としても投資先としても魅力がある」と指摘する。とくに中国や韓国など経済成長率の高い国の企業は、大きな収益性が期待される。
一方で、高い将来性が期待できるのは、創薬事業だ。同社では『テーラーメイド創薬』(登録商標)を標榜している。
これは、遺伝子型によって、薬の有効な人、副作用の出る人を判別(層別)し、薬を開発することをいう。同じ薬でも、効く人と効かない人、副作用の出る日と出ない人に分かれる。人の体質、つまり遺伝子の個人差によるものだ。
テーラーメイド創薬が実現すれば、薬の種類を決めて個人に適した診断や薬の投与ができ、診断・治療の場において、個人に適した診断や治療を行う「個の医療」に役立つ。
また、医薬品(新薬開発)の場においても、開発コストや費用を低減させることができる。少しでも多くの医薬品が誕生し、科学的根拠に基づいた診断・治療がされ、個の医療や予防医療が進めば、医療費の削減にも繋がる。国策とも合致しており、世界的に追い風が吹いている事業領域である。
同社が行っているすい臓がんを対象とした抗がん剤の開発だが、すい臓がんは、患者数が少ない割に死亡例が多く、現在も患者が増加傾向にある。その一方で、有効な薬剤が乏しい。医療上のニーズが極めて高く、社会的貢献も果たせる分野なのだ。
アメリカですでに、同剤の共同開発を行っているスレッシュホールド社が実験の最終段階に入っており、同国政府の食品医薬品局から、社会的ニーズが高い新薬の審査を迅速化する『ファストトラック 』(優先審査)の指定を受けている。
メディビックでは、2011年ごろから売上計上できると見ている。
とはいえ、会社全体の業績では、バイオマーカー創薬支援事業と投資・投資育成事業の伸びが大きいため、3ヵ年の中期経営計画では2008年度に売上高28億円、経常利益5億円と、黒字転換する予定だ。
橋本社長は言う。
「日本ではバイオベンチャー投資の歴史が浅く、投資家の方々には、バイオはわかりにくいといわれる。企業としては、収益をあげるのは必須の使命であり、投資家への還元に努めていく。が、同時に、人の健康や医療に貢献するミッションを持って事業を進めている。創薬が具現化すれば、大きな革命的な企業になり得るので、ぜひご支援を賜りたい」