■『グローバル化時代における日本の飲料の取り組み』を聞く
急速にグローバル化の進む今日。飲料の業界においても、日本の得意とする「茶飲料」、「無糖飲料」が広く世界に認知され、伸長している。高齢化と健康性指向が高まっていることがある。ニューヨークでは「炭酸飲料税」も検討されているという。総合飲料会社を目指して展開の伊藤園<2593>(東1)は、海外では和の食文化具現化で茶飲料を積極展開。国内では炭酸系、コーヒー系などを強化する。管理本部の水野俊作副本部長に、グローバル化時代への取り組みについて聞いた。

――今回はグローバル化の時代において、日本の「食」、とくに、御社の飲料事業をどのように展開されるのか。もう一点、御社の優先株についてお聞きします。優先株については、ビデオでお願いします。
【水野副本部長】 「食」の分野は、人間の根本に近い分、お金の世界や家電・自動車などの製品に比べ、その変化のテンポはどうしても遅くなる傾向にあります。しかし、和食はそのおいしさと素材の豊かさ、多様性さらにその健康性により、今、注目度が集まっており、高い「食文化」として世界に認められようとしております。当社の所属する飲料の分野においても、日本は非常に高いレベルにあります。特に諸外国が、炭酸系飲料が中心であるのに対し、日本は「茶飲料」「無糖飲料」が非常に広く認知されております。そのなかで、当社は「茶系」「野菜系」の飲料で先鞭をつけてきたと自負しています。
――「茶飲料」「無糖飲料」が世界で本格的に注目される、ということでしょうか。
【水野副本部長】 そうです。NY州においては、「炭酸飲料税」が検討されていると聞いており、日本で開発された「茶飲料」「無糖飲料」が、その健康を背景に世界において、熱い注目を浴びています。
――なぜですか。
【水野副本部長】 現在、世界ではこれまでにない豊かな社会が実現し、同時に人口の高齢化が進んでおります。人々は健康に対してより強く指向し始めており、これに沿う形で「和食」が取り入れられるという、大きいトレンドが起きております。このニーズにマッチするのが、無糖系の「お茶」です。お茶は日本に古くからあります。このお茶の「飲料化」にもっとも早く取り組み事業化に成功したのが当社です。
また当社はアメリカにおいて緑茶の癌抑制効果の研究を行ってきたことなどもあり、アメリカで展開してきた茶系飲料の現地子会社が黒字のめどがつくまでになりました。まさしく、アメリカで認められてきた証だと思います。特に、冒頭申し上げたように、「食」はそれぞれの国の根っこにあるものであり、それだけ保守的なものです。そのことからみても、無糖系の茶系飲料が国境を越えて世界で花開く時を迎えていると思っています。
――今後の取り組みはいかがですか。
【水野副本部長】 海外ではアメリカのほかヨーロッパ、東南アジアでも、和の食文化を具現化するという伊藤園の個性を意識して着実に展開しております。すでに中国でも、関連会社で無糖の茶飲料の製造を行い、香港で販売しております。
一方、国内では、「おーいお茶」、「野菜系」を軸にコーヒー、ミネラルウォーター、紅茶などのブランドの育成を行っております。
――お茶だけではないということですか。
【水野副本部長】 そうです。日本国内においては、アルコール以外の飲料を手がける総合飲料会社を目指してチャレンジしています。その「ブランド・ポートフォリオ」のやり方は、会社名で売り出すのではなく、個別ブランドを前面に出し、その集合体として展開する「ブティック型ポートフォリオ」です。このポートフォリオに沿って、年間販売数量で1000ケース以上のブランドを多く育成します。既に、「おーいお茶」系では年間8000万ケース、野菜系で2000万ケース、麦茶でも1000万ケースです。
――特に、強化されるカテゴリーは。
【水野副本部長】 そうですね。伊藤園の特徴として「和風」には強いが、「洋風」にやや弱いという面があります。「おーいお茶」などの緑茶飲料は「和風」として強みになり、特に海外展開ということではたいへん有望です。ただ、国内展開ということでは、炭酸系、コーヒー系などに弱いところはあります。そこで、有力カフェチェーンである「タリーズコーヒー」を子会社にするなどM&Aで強化しています。今後もM&Aは検討する方向です。なお、「和風」の強さの基本は、「素材力」だと思います。素材の良さが健康に結びつくのです。当社のお茶は、どこにも真似のできない原料に対するこだわりの強さがあります。この点が、国内だけでなく、今後、海外において評価されるものと思っています。
――最近、「紅茶」が好調のようですが。
【水野副本部長】 『ティーズ、ティ』のブランドで数年前からニューヨークで育成してきました。現地でたいへん好評を得ており、昨年から日本へブランドの逆輸入を行いました。これまでにないコンセプトにより女性層を中心にたいへん好調です。さらにミネラルウォーターにおいては、「エビアン」の国内独占販売権を取得し、2年前より当社より販売しております。一方、炭酸飲料やスポーツ飲料などはまったく手付かずの分野と言ってもよく、弱点でもありますが、逆に当社の『のびしろ』でもあり、今後、強化し大きくしてまいります。
――それでは、ビデオで「優先株」についてお願いします。