首都圏中心の投資用ワンルームマンションに特化
厳しい環境下でも"商品力"の底力で好調な成績
アーバネットコーポレーション<3242>(JQ)は、投資用ワンルームマンションを首都圏中心で展開する。業界環境の厳しい中で、今年9月には伊藤忠都市開発との間で136戸もの大量の契約を成立させた。この背景には、営業に偏らない企画、商品力を底力としたデベロッパーとしての姿勢が貫かれている。そこには、服部信治社長の少年時代からやりたかった建築への熱い思いが込められている。服部信治社長に「経営への思いと展望」を聞いた。
博多での賃貸事業で実感した
「不動産は東京以外ではやるべきではない」の
強い思いを貫く

服部社長 東京には若い人を中心に人口の流入が多く、ワンルームマンションに対するニーズは非常に強いものがあります。また、最近は郊外から都心への回帰の動きも強くなっています。私は、福岡県の出身で、博多で賃貸事業の経験があります。その経験の中で、地方と東京との民力の差を実感しています。博多も大きい都会ですが、東京の懐の深さは段違いです。「不動産のビジネスは東京以外ではやるべきではない」との強い思いで取り組んできました。
――福岡はどちらのご出身ですか。少し、少年時代についてお願いします。
服部社長 福岡県大牟田市です。海にも近く、当時、テレビの人気番組、『兼高かおる世界の旅』にも刺激されて、高校時代は船乗りになりたいと思っていました。目をけがしたため夢は消えましたが、もうひとつ、やりたかった建築分野に進むため東京の大学に進学しました。卒業と同時に不動産デベロッパーへ入社し設計部に配属されました。その後、建築事務所に移り一級建築士の資格を取り、27歳の時に設計事務所をつくり、さらに29歳のとき友人に誘われて建築コンサルタント会社を設立し、18年間一緒にやりました。47歳のとき当社を設立しました。
自ら起業し徹底して『商品』にこだわったデベロッパーを展開
――建築設計だけでなく、不動産の売買・賃貸を事業としてスタートされましたが、これはどのような思いですか。
服部社長 以前からデベロッパーをやりたいという思いを持っていました。特に、最初に就職したのがデベロッパーで、その頃は「デベロッパーは営業ばかりの主導で、設計がおろそかにされている」、との思いが非常に強かったですね。デザインを中心としたモノ作りに特化した不動産開発を手がけたい思いで始めました。
――今、環境は厳しいようですが。
服部社長 アメリカのファンドの引き揚げ、銀行の融資に対する慎重姿勢など、業界環境は厳しい状況です。当社も在庫整理に取り組んでいます。しかし、当社は、基本的には財務面もしっかりしていますしワンルームマンションに特化したモノ作りの姿勢は評価されています。
――たとえば。
服部社長 今年9月に武蔵小杉(川崎市)で136戸の初めての東京以外の物件について伊藤忠都市開発との間で契約ができました。この戸数は当社の平均的な規模に対し2倍の規模の物件です。厳しい環境の中で売買契約ができたのは、当社の企画、商品力が評価されたと思っています。
――もの作りの姿勢ということについて、もう少し教えてください。ワンルームマンションでの商品力はどのようなところでしょうか。
服部社長 ワンルームマンションの歴史を少し申し上げましょう。まず、35年くらい前に15〜18平方メートルの広さのビジネスマンションが登場しました。起業ブームのハシリの頃です。都心で仕事をして週末は自宅へ帰る、といった需要もありました。投資が目的というより実需でした。次に、今から22年くらい前に18平方メートル規模で、所有者と住む人は別という、いわゆる投資用のワンルームマンションの第一次ブームが起きました。そして、10年くらい前から、東京への一極集中傾向がいっそう強まり、第二次投資マンションブームが起きています。広さは21平方メートル以上となりました。
――ワンルームマンションも徐々に広いスペースになっているのですね。
服部社長 第一次に比べて3平方メートル以上広くなりました。出張された時のビジネスホテルを想像してもらうとお分かりいただけますが、第一次の頃のワンルームマンションはトイレ、風呂、洗面台がユニット式で1ヶ所でした。3平方メートル広くなったことで、当社は先頭を切って、トイレと洗面所を外に出し浴室と分けました。トイレが同じ所にあると、とくに、女性の方は嫌がります。
――そのほかには、どのような改良点がありますか。
服部社長 まず思ったことは、「3平方メートルの差はトイレだけでいいのだろうか」ということでした。そこで、入居1,2年の方に徹底的にアンケートを実施しました。業界でも部屋選びの際のアンケートはありますが、入居している人へのアンケートはまずありません。不満が出てくると面倒という思いがあるからです。アンケートへの謝礼の金額を変えてみるなど、徹底的に実施しました。ワンルームといえども、利用者には必ずなにかしらの思いがあるはずですから。
――結果に興味がありますね。どのようなことでしたか。
服部社長 圧倒的に多かったことは2つありました。1つは収納への不満、もう一つは風呂が狭い、ということでした。収納については空中空間の利用を考えました。よく観察すると、あるものです。洗濯機の上部スペース、下駄箱の上のスペースなど、結局、テイッシュペーパーの箱800個分のスペースを作り出すことができました。
――すごいですね。建築設計がご専門の強さが発揮されましたね。しかし、お風呂を広くするのは難しかったのではありませんか。
服部社長 そうですね。ゆっくりと足を伸ばして入りたい、という希望が非常に強いのですが、部屋の大きさは変えないで、その要求にどのように応えるか、大変でした。考えた結果、浴槽を浴室のタテとヨコを逆にして長手に設置し、今までの浴室とほぼ同じ大きさで足が伸ばせるユニットバスを高級浴槽のトップメーカーであるジャクソンと共同で開発しました。また、5年前にはマンションの外観をモノトーンへ変えました。それまで、業界ではベージュが中心でしたから、これは受けました。派手さはありませんが、どのような街のロケーションにも溶け込み存在感があります。とくに、女性に高い評価を得ています。当社の物件の入居者の半分以上は女性です。
――パンフレットを拝見しますと、床なども洒落ていますね。
服部社長 エントランスには彫刻等を必ず設置しています。特に、セールスポイントは、家具の色に合わせることができるように、床の色を茶、黒、白の3色を用意しています。配色の基本を茶4、白4、黒2の割合とすることで、入居者のみなさんの家具などのカラーに合わせることができます。
――ここまで、こだわりがあると、少しくらい家賃が高くても、ということにはなりませんか。
服部社長 その通りです。アンケートでも外観、彫刻、収納、風呂などに対する評価で月1000〜3000円高いていどなら当社を選んでいただけるという結果となっています。
不動産不況の中でファミリーマンションの
新築残古分野はチャンス
強い財務内容を武器に積極的に展開へ
――今後の取り組みについてもお願いします。
服部社長 今までは投資用のワンルームマンションの1棟売りがビジネスモデルでしたが、われわれの手でも販売を強化していきます。今年夏から営業社員を募集しています。まず、新築残戸のファミリーマンションからスタートします。
――中古マンションの狙いはどのようなところですか。
服部社長 ファミリーマンションの在庫は首都圏で2万戸とも3万戸ともいわれます。ニーズはあるのですから値引きすれば売れますが、最近まで高い値段で販売していたためデベロッパーでは値引きができません。当社は今まで参入していませんでしたから、この分野への展開が可能です。つまり、販売価格から4割程度安く仕入れて、2割引程度で販売します。最近、たまプラーザの物件を13%引きで4戸売り出したところ2週間で売れました。銀行から資金も出してもらえます。2年程度は中古のファミリーマンションはビジネスチャンスだと思います。
――今6月期の見通しをお願いします。
服部社長 今年秋から、さきほどお話しました、足の伸ばせる新しいタイプの浴槽を標準装備していきます。中古マンションの仕入販売も見込めます。売上高33.6%増の125億円、営業利益27.5%増の6億2000万円の計画です。配当は年5000円を継続の予定です。
――ありがとうございました。
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