アイビーシー<3920>(東1)は、ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーである。成長戦略に「新製品発売」「成長分野進出」「サービス領域拡大」を掲げ、性能監視のリーディングカンパニーからハイブリッド・クラウド、ブロックチェーン、IoTセキュリティ分野などITサービスへの事業展開を目指している。成長分野への進出など、中期的な取り組みや成長における課題を加藤裕之社長に聞いた。
■18年9月期は2桁増収増益予想
Q:先ず業績について、前期の実績と今期の見通しについてお聞かせください。
【加藤裕之社長】 前期(17年9月期)に関しては、上期は上方修正であったが、新製品「System Answer G3」(以下、G3)の発表により、下期は主力製品である「System Answer G2」(以下、G2)の買い控えの影響を受けた。サービス提供の売上が好調に推移し、売上高は10期連続増収で過去最高だったが、期初計画は若干下回った。利益は先行投資の影響もあり減益となった。
ただし「Interop TOKYO 2017」(注:ネットワークコンピューティングに特化したテクノロジーのリーディングイベント)などでは、新製品「G3」がクラウドとオンプレミスのハイブリッド環境においても有効に機能することから、多くのエンドユーザーやパートナーから好評を得た。
顧客の多くが大企業で、既存製品「G2」から新製品「G3」への移行は検証を重ねてから導入ということになるため、今期(18年9月期)の下期から「G3」ライセンス売上が本格化する見込みだ。17年8月開始した次世代MSP新サービス「SAMS」に対する引合いも増えており、今期は2桁増収増益を達成できると考えている。
■ブロックチェーン技術を活用した「kusabi」は画期的サービス
Q:成長分野への進出で大きな動きがあるようですが?
【加藤裕之社長】 17年12月にIoTデバイス向けセキュリティサービス「kusabi(楔)」の実証実験開始を発表した。
IoTデバイス向けのセキュリティ対策では近年、専用チップ+認証局(CA)モデルが注目されているが、製造コストや運用コストの増加、ベンダーロックインによる汎用性の低下が課題として指摘されている。
これに対して「kusabi」は、ソフトウェアだけでIoTセキュリティを実現できる。特許出願中のブロックチェーン技術を使った電子証明システムと、独自のデバイスプロビジョニング技術により、3つの不要(専用チップが不要、認証局が不要、マルウェア対策が不要)を実現し、ハードウェア依存モデルからの脱却を目指すセキュリティサービスだ。
私もIT業界は長いが「kusabi」は画期的なサービスだと考えている。市場では「何がスゴイのか」という部分が必ずしも理解されていない印象を持っているが、今後の展開によっては大化けする可能性も十分にある。収益貢献には少し時間がかかるとみており、今期の予算には含めていないが、もし今期に売上計上された場合には、当然上振れ要因となる。株式の流動性を高め、また技術やサービスに対する理解をより深めてもらえるように、IRについても積極的に実施していきたい。
■中期的には「G3」「SAMS」「kusabi」が3本柱
Q:中期的な収益の柱は?
【加藤裕之社長】 新製品「G3」と新サービス「SAMS」がある。これに「kusabi」を加えて3本柱になると考えている。
またブロックチェーン・IoT分野でソフトウェア・サービスを展開する子会社iBeedにも注目していただきたい。ブロックチェーン技術専門会社のコンセンサス・ベイスや、保険業界に強いバクテラ・コンサルティング・ジャパンと提携し、現在はインシュアランス(保険)分野にフォーカスして開発を進めている。インシュア・テックは日本では手掛けている会社がほとんどなく、保険会社からの問い合わせも増えている。今は連結対象にしていないが、そう遠くないうちに何か面白いことが話せるように、今は色々と準備を進めているところだ。
ブロックチェーン関連では、最近仮想通貨の相場高騰が話題となっているが、あれは投機目的で動いているのであって、テクノロジーでもフィンテックでもないように思っている。個人的には地に足をつけて、ブロックチェーン技術を活用したビジネスを展開していくことを考えている。
■人材確保が課題
Q:今後の課題としている人材確保の状況はいかがでしょうか?
【加藤裕之社長】 新製品「G3」や新サービス「SAMS」の売上を伸ばすためにも、中期成長戦略を着実に実施していくためにも、人材確保・育成が重要であり、課題であることに変わりはない。
複数のIT分野に精通し、全体俯瞰ができる人材の確保を進めているが、まだ不十分な部分もある。他方、知見を持った人材も集まってきているので、今後はアプリケーションやサービスを考えられる人材も徐々に増やしていきたい。
当社の事業内容やビジネスモデルは、頭数さえ揃えば成長できるというものではない。売り手市場の中、優秀な人材の確保は簡単ではないが、人材の採用・育成を着実に進め、中期成長に対する投資家の期待に応えていきたい。
――本日はありがとうございました。