■SIP技術が評価されNTTと資本・業務提携

■NTTのNGN(次世代ネットワーク)普及に共に取り組む
――このほど、日本電信電話(以下NTT)及び、NTTの100%子会社のNTTインベストメント・パートナーズと提携されました。概要をお願いします。
阪口社長 3社の間で、NGN(Next Generation Network=次世代ネットワーク)を活用したアプリケーション開発を容易にするソフトウエア開発キットの開発や利用促進について業務提携しました。また、当社に対し総額約9900万円の出資をいただきました。
――出資はどのような形ですか。
阪口社長 NTTインベストメント・パートナーズを引き受け先とする第三者割当増資です。発行価格については2月4日の取締役会決議の前営業日から遡る45日間の大阪証券取引所における終値の平均値(1万8175円)を参考として1万7300円(ディスカウント率4.8%)としました。増資による新規発行株式数は5730株で、2月20日の払い込み後、NTTインベストメント・パートナーズファンド投資事業組が持株比率6.22%で、当社の第2位の株主となっています。筆頭株主は当社の創業者であり会長の村田利文で持株比率は8.36%(増資前8.91)です。
――資金の使途はいかがですか。
阪口社長 出資していただいた資本は、「NGN用SIP−SDK」の開発資金並びに商用化のための資金として充当します。
■「SIP技術」は、「糸電話」と紙コップを繋ぐ糸の役目
――御社はIP電話、ビデオ会議などを実現する技術「SIP」のソフト開発などで国内首位とお聞きしています。難しい分野ですので、分かりやすくお願いします。(※SIP=Session Initiation Prtocol)
阪口社長 そうですね、「糸電話」でご説明しましょう。皆さんも、小さい頃、紙コップと糸で話をして遊んだ経験があると思います。糸電話で話をするためには、糸の先に繋がった紙コップを相手のところに届けなくてはいけません。SIPの働きは、この糸電話に例えると、「話したい相手まで糸の先を運び、糸を張る」ことです。SIPは、ネットワークに接続されたSIP端末の中から、話したい相手を正しく見つけ出し、そのSIP端末との間で「セッション」をつくります。セッションは糸電話の糸に当るもので、この仮想的な糸を使って音声をやりとりすることができます。もちろん、SIPは糸電話でできなかったこと、例えば、セッションではビデオや写真といった音声以外のメディアや様々なデータのやりとりもできます。さらに、相手の人が今、ネットワークにつながっているのか、あるいは外出中なのかといった情報をやりとりする「プレゼンス」と呼ばれる機能もついています。
――分かりやすい、お話をありがとうございます。IP電話もこの技術によるものでしょうか。
阪口社長 そうです。SIPの基本機能によって、「IP電話」と呼ばれる、インターネットを使った電話を実現しました。また、インターネットで"人と人"、"モノとモノ"を直接通信させるSIPの有効性は、電話以外でも注目されています。特に、SIPは機能を簡単に拡張できる大きい特徴を持つため、SIPを想定したインターネットの標準化団体の「IETF」では、複数の作業部会でSIPの機能拡張を進めています。SIPという1つの通信規格に対して、既に、拡張仕様が200以上に達しています。
■身の回りの機器をネットで繋ぐ「ユビキタスネットワーク」の主役
――身の回りの機器類はほとんどということでしょうか。
阪口社長 そうです。身の回りのさまざまな機器をネットワークに繋ぎ、場所に縛られない自由な使い方や機器と機器との連携などを実現させるため、今なお拡張作業は活発に進められています。当社が取り組むSIP技術は「ユビキタスネットワーク」という言葉を現実のものへと変えて行きます。
――NGNの中心となるのがSIPということでしょうか。

――インターネットとの違いはどのような点でしょうか。
阪口社長 NGNはデータ通信もできるのですが、インターネットと異なる点は、一言でいえば、「安心と安全」です。SIPで実現するNGNの大きな特徴は、電話のように通信する相手を正しく特定することができ、同時に通信のセキュリティを守ることができることです。安心・安全によって、これまでネットワークに繋ぐことができなかった企業や家庭内の様々な機器との接続を可能とすることができます。
――SIPの利用範囲が広がって行く印象ですね。
阪口社長 SIPはインターネットから始まり、携帯電話のIMS、固定電話のNGNへとその応用範囲が広がっています。遠く離れた家族の顔や表情をテレビへ鮮明に写し出して楽しく会話をしたり、高齢の親族の健康状態を鮮明な画像で顔色から判断できます。あるいは、出張先で作成中の資料をオフィスの同僚に見せながら説明できます。遠隔地医療、高度道路交通システムといった生活基盤でも活用されます。これまで場所や機器によって分断されていた生活シーンを、SIPとNGNによって繋いで行くものです。
――御社はこの分野で先行されているとお聞きしています。
阪口社長 当社はSIPの初期から技術開発を進め、SIPが使われる様々なシーンにおいて、多くのソフトウエア資産とノウハウを蓄積してきました。これらの技術は、身の回りの機器やネットワークシステムの中に組み込まれ、ユビキタスネットワーク社会を支える基盤となっています。これまで、当社が描いてきたことが現実となってきたと実感しています。
――NTTとの提携はこうした背景によるものですね。
阪口社長 そうです。NGN(次世代ネットワーク)の普及を共にやることが根幹にあります。NGNを活用したWindowsアプリケーションやWebアプリケーションの開発を容易にする「ソフトウエア開発キット」の開発に着手し、今年5月をめどに提供を始めます。
■「開発キットの無償提供」→「NGNサービス利用拡大」→「NGN市場拡大」→「SIP市場拡大」→「同社事業拡大」の図式
――もう一度、流れをお願いします。
阪口社長 「Windows版開発キットの無償提供」→「NGNサービス利用拡大、普及促進」→「NGNサービス市場拡大」→「SIP市場の拡大」→「ソフトフロントの事業拡大」、という流れです。
――個人投資家の皆さんへメッセージをお願いします。
阪口社長 SIP/NGNは非常に有望な市場ですから、ご期待いただきたいのと同時に、中長期でのご支援をお願いします。
――楽しみですね。ところで、社長様とIT技術との出会いは、どのようなものでしたか。
阪口社長 私は徳島県の出身で、実家は医者の家系です。家族は、私を医者にさせたかったようですが、コンピューターに興味がありましたので早稲田の電気工学科へ進みました。まだコンピューターはそれほど知られていないころです。ちょうどマイコンが出始めた頃でした。大学のゼミで関係が深かったキヤノンへソフトウエアの仕事をするために就職しました。
――キヤノンはカメラが中心だったのでは。
阪口社長 当時、キヤノンはオフコンや計算機もやっていました。私は、計算機を中心に担当し、初期の頃のワープロも手がけました。それから研究所に移って、ここで、当社の創業者の村田会長と出会いました。当時、キヤノンの中でソフトビジネスを立ち上げたい希望を持っていましたが、会社の方向性が違ってきたので、当時から上場を目指していた村田会長と一緒にソフトウエアビジネスをやることになりました。
■信条は『あきらめない』、『やるからにはやる』こと
――社長様のお好きな言葉を是非お願いします。
阪口社長 子供の頃、父から、「あきらめないこと。やろうと思えばできる」と言われていました。思春期の頃は、思ったからといって、できるものではないと反抗していましたが、最近は父の言ったことが理解できるようになりました。「心の底でわずかでも、できないと思ったらだめだ」と思っています。「やるからにはやる」という強い気持ちが大切と思っています。
――健康法はいかがですか。
阪口社長 体を動かすことは好きです。ウォーキングとゴルフで汗を流すようにしています。
――ありがとうございました。